コラム

トランプ大統領の選対本部長変更は吉と出るか・凶と出るか

2020年07月30日(木)17時30分

トランプ再選チームの選対本部長を更迭されたブラッド・パスケール氏 REUTERS/Jonathan Ernst

<これまでトランプ大統領の再選チームは、デジタルマーケティングの専門家であるブラッド・パスケール氏が選対本部長を務めてきたが、ここへきて更迭となった。その背景は......>

7月15日、トランプ大統領はブラッド・パスケール選対本部長の降格、後任にビル・ステピエン氏の就任を発表した。

これまでトランプ大統領の再選チームは、デジタルマーケティングの専門家であるブラッド・パスケール氏が選対全体の責任者である選対本部長を務めるという極めて異色な体制を取ってきた。2016年大統領選挙当時、ヒラリー陣営に対して圧倒的に資金面で劣後していたトランプ陣営は、ネット広告による効率的で安価なキャンペーンを採用し、ブラッド・パスケール氏はその中心として活躍した。そのため、その後も現在に至るまでパスケール氏が選対本部長の役割を務めてきていた。

筆者は新型コロナウイルスが猛威を振るう中での今回の選対本部長交代劇には些か疑問を感じている。特にバイデン選対が6月末にオバマ・バイデンのオンライン講演会を大成功させるとともに、本格的にデジタル戦略の専門家を任命したことを考えても、今後の主戦場はオンラインでのコミュニケーション戦略になることは明白だからだ。本来はパスケール氏の重要性は更に増していくはずであり、まして更迭などをしている場合ではない。

後任のビル・ステピエン氏とは

トランプ大統領がパスケール氏を降格した理由は、最近になって噴出し始めた同氏を巡る選挙資金に関する連邦法違反の問題もあるのではないかと推測される。

当初の報道では降格原因は支持率低迷やタルサでの集会動員の失敗の責任を取らされたとされていたが、7月28日に同氏の手法について資金監視団体から連邦法違反の疑いで訴状が提出されている。訴状はスーパーPACと広告委託先の透明性確保に関して問題提起しているが、そのタイミングに鑑み、同情報を事前に仕入れたトランプ陣営が次善の策として同氏を降格させたと見ることもできる(当然だが、トランプ陣営は法律上問題がないと主張している)。選対の中ではパスケール氏の代わりにビル・ステピエン氏を選対本部長に据えるべく、5月頃から大統領娘婿のクシュナー氏が動いていたようだが、今のところ真相は分からない。

後任のビル・ステピエン氏は2004年のブッシュ再選時にューハンプシャーの選挙で功績をあげ、2008年のマケイン陣営のナショナルディレクターを務めた後、ニュージャージー州でクリス・クリスティ元知事を二度勝利に導いた選挙参謀である。相対的にリベラルな州で共和党知事を勝たせるという難業を成し遂げてきた人物であり、トランプ選対には2016年段階から加わっている人物だ。最近ではトランプ大統領の弾劾に反対したジェフ・バンドリュー民主党下院議員(ニュージャージー州選出)を共和党に鞍替えさせるなど、優れた政局眼と高い交渉力を発揮したと目されている。しかし、実際にはその手法にやや強引な面もあるため、クリス・クリスティ―元知事とは最終的に疎遠になった一面もある。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

フィッチ、インドネシア見通し「ネガティブ」に下げ 

ワールド

イラン軍艦がスリランカ沖で沈没、32人救助 遺体を

ワールド

中国政協開幕、軍トップ張氏ら政治局員2人が姿見せず

ビジネス

スイス中銀、為替介入意欲が高まる=副総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 6
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story