コラム

2020年米国大統領選挙を左右する第三極政党の動向

2020年07月03日(金)14時45分

リバタリアン党はジョー・ジョーゲンセンを選出した...... libertarian presidential candidate 2020

<トランプ大統領vsバイデン元副大統領の戦いのみがクローズアップされるが、第三極政党の候補者らの動向は、大統領選挙の結果を左右する要素となっている......>

米国は共和党・民主党による二大政党制の国と考えられており、それ以外の政党の存在は忘れられていることが多い。特に大統領選挙の報道では、トランプ大統領vsバイデン元副大統領の戦いのみがクローズアップされるため、第三極政党の候補者は忘却されがちである。

しかし、実はこの第三極政党の候補者らの動向は、大統領選挙の結果を左右する要素となっている。その第三極政党とは、リバタリアン党と緑の党の2つの政党である。リバタリアン党は自由至上主義的な傾向を持つ政党であり、共和党と民主党の政府介入を嫌う部分を併せ持った性質を持つ政党である。緑の党は名前からも分かるように環境政策等を重視する左派政党である。

泡沫政党が結果として大統領選挙の結果を左右した理由

読者の多くは、このような泡沫政党が大統領選挙の結果を左右すると言われても俄かに信じがたいものと思う。そこで、2016年の大統領選挙でこの2つの政党の候補者の得票が大統領選挙結果を左右したことを数字で証明しよう。

2016年大統領選挙、全米得票数はヒラリー(65,853,514票、48.18%)、トランプ(62,984,828票、46.09%)であり、リバタリアン党のジョンソン(4,489,341票、3.28%)、緑の党のステイン(1,457,218票、1.07%)であった。第三極は1%も取れないことが通例であるが、2016年大統領選挙ではヒラリー・トランプの不人気の相乗効果があり、第三極候補者が史上稀にみる高得票数を叩き出した。特にジョンソンはリバタリアン左派色が強い候補者であるとともに、元ニューメキシコ州知事という一定の社会的ステータスもある候補者であった。そのため、リバタリアン党としては快挙とも言える得票率を得ることになった。

更に分析を深堀していこう。全米得票数でヒラリーはトランプを凌駕したが、実際には勝負を決めたのはフロリダやラストベルトを始めとする接戦州の選挙結果であった。(大統領選挙は全米得票数ではなく各州に割り当てられた代議員数の奪い合いであるため。)では、この接戦州の第三極政党の動向はどうか。

たとえば、最重要接戦州のフロリダの最終得票結果はトランプ49.02%、ヒラリー47.82%、ジョンソン2.2%、ステイン0.68%であった。また、ラストベルトの代表州であるペンシルベニアではトランプ48.18%、ヒラリー47.46%、ジョンソン2.38%、ステイン0.81%であり、他のラストベルト接戦州(ミシガン、ウィスコンシン)も似たような数字であった。つまり、トランプとヒラリーの得票差分は第三極政党(特にリバタリアン党)の得票%以内に収まっているのだ。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国投資家、転換社債の購入拡大 割安感や転換権に注

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story