コラム

韓国大統領の弾劾裁判騒動に思う、「大統領降ろし」という当然の権利

2025年03月08日(土)17時39分
カン・ハンナ(歌人、タレント、国際文化研究者)

DAMON COULTERーSOPA IMAGESーREUTERS

<いまだに大統領の弾劾裁判に揺れ続ける韓国。自分たちの一票で国のトップを選べるからこそ、ひとたび不祥事が起これば引きずり降ろそうとするのも当然だ>

日本では少し関心が薄れてきたようだが、韓国では昨年12月、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣言に端を発した政治的混乱がいまだに続いている。

正直、日本で暮らす私からしてみれば何が起きたのか分からず驚いたが、韓国の家族や友人の反応は「大統領でも罪を犯せば厳重な審判を受けるべき」と意外にも冷静だった。尹大統領の弾劾を求める大規模デモが各地で連日繰り広げられ、日本でも在日韓国人を中心に数百人規模のデモが新宿で行われた。皆さんも、韓国国民の政治に対する情熱には驚いたのではないだろうか。


韓国では国民の多くが自由民主主義への意識を高く持ち、国民の声をしっかり政治に伝えるべきだと思っている。だからこそ大統領を任期途中で降ろすために、自分たちの声を張り上げて大規模デモを行ったというのはまっとうな話だ。

その理由の1つは、国家のトップを選ぶ制度にある。国会議員が首相を選ぶ日本と比べ、韓国の大統領は国民による直接選挙で選ばれる。これは大きい。私も韓国に暮らしていた時代に自分が投票して選ばれた大統領には期待感が高まったし、問題を起こせば失望感も大きかった。今回のように、自分たちが選んだ国のリーダーが罪を犯した場合、大統領の座から降ろすことも自分たちの権限であり、義務だと思っている。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story