コラム

外国も驚く日本の子どもの貧困...見えていない現実を変えるため必要なこと

2024年07月18日(木)18時03分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
子供, 貧困, 相対的貧困, OECD

PHOTOCHEAPER/ISTOCK

<食事の回数を減らすほど貧しい子どもが日本にはたくさんいる。外国人も驚くこの実態は非常に目にされにくく、社会や共同体の支援を妨げているように思える>

もうすぐ子どもたちの夏休みが始まる。読者のみなさんも、楽しい夏休みの思い出があることだろう。

しかし最近、日本における子どもの貧困が問題になっていることはご存じだろうか。夏休みになると学校で給食が食べられないため、一日の食事が3回から2回以下に減ってしまう家庭がある。食べ盛りのはずなのに、食事を減らすために朝は遅くまで寝て過ごし、それでもおなかをすかせている子どもがたくさんいるというのだ。


日本も貧しくなったと思う理由

私がそういう日本の現状を外国人観光客に話すと、みな一様に非常に驚く。特にアジア人のインバウンド客は全然信じようとしない。日本は豊かな国、というイメージがいまだにとても強いためだ。

かつて世界2位の経済大国に上り詰めた日本に貧困があるなど、とても信じられない話で、日本人はみな恵まれた生活をしているというイメージを持っているのだ。

私の生まれ育ったイランは就学率も識字率も85%を超え、石油や天然ガスなど天然資源が豊富なため、中東でも豊かな大国だ。それでも経済格差は大きく、宮殿のような豪邸が立ち並び、欧米の超高級車ばかりが走る地区がある一方で、貧しい家庭の子どもが路上で行き交う車を相手に菓子を売り、車を洗って駄賃をもらう仕事をしている姿が見られる地域もある。

もちろん児童労働は禁止されているのだがあまりに家庭が貧しく、勉強よりも日銭を稼ぐことを優先せざるを得ない家庭があるということだ。こういった子どもたちを支援しようと、無料で子どもに食事を振る舞うレストランやボランティア団体に参加や寄付をする人も多い。

だが長引く欧米の経済制裁の影響もありインフレ率が高く、一般市民の給与や年金の額は上がらないが、物価は容赦なく上がっている。この状況で全人口の半分が貧困線(所得の中央値の半分)以下で暮らしているという調査もある。

私はそういった状況は、日本には無縁なものだとずっと思っていた。だが、30年くらい前から日本で生活している外国人の知り合いが言うには、彼が日本に来た頃は、道端にまだ使える家電や家具が粗大ゴミとして捨てられていて、なんて豊かな国だと驚いた。だがここ10年くらいは本当のゴミしか捨てられていない、日本も貧しくなった、と思うそうだ。

その上夏休みは日に2食しか食べられずおなかをすかせた子どもがいるとなると、日本も学校に行けずに働いている他国の貧しい子どもたちの状況を、全くの人ごととは考えられない事態になっているようだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

25・26年度の成長率見通し下方修正、通商政策の不

ビジネス

午前のドルは143円半ばに上昇、日銀が金融政策の現

ワールド

米地裁、法廷侮辱罪でアップルの捜査要請 決済巡る命

ビジネス

三井物産、26年3月期は14%減益見込む 市場予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story