最新記事
教育

日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない

2026年3月6日(金)10時00分
舞田敏彦 (教育社会学者)
男性教師

日本は韓国やアメリカと比較しても教員への敬意が低い photoAC

<教員の学歴要件を修士に引き上げ、在職中の大学院研修制度の拡充も図るべき>

「三歩下がって師の影を踏まず」とはいつの時代の格言か......。教員に対する敬意は時代と共に下がってきており、教員をまるで自分の下僕のように見なす「モンスターペアレンツ」も増殖している。

昔は、未知の知識を教えてくれる存在として教員には敬意が表されていた。しかし、インターネットなどで知識を得られる現在では、そのようなことはない。国民の高学歴化により、教員と保護者の学歴差も縮まっていて、地域の「知識人」として敬われる条件はなくなっている。


フランスの社会学者デュルケムは、教員には道徳的権威が不可欠だと述べたが、その基盤となるのは学識を多く身に付けていることだ。それを自他に対し客観的に示してくれるのが「学歴」だと言える。その目安として大学卒の割合に注目されることが多いが、国民の高学歴化が進んでいる今の日本の場合、一段上の大学院卒の割合に着眼するのがいいだろう。

IEA(国際教育到達度評価学会)の調査「TIMSS 2023」によると、日本の小学校教員の大学院卒率は5%。OECDの「PIAAC 2022-2023」によると、30~40代の既婚者の大学院卒率も同じく5%。教員の大学院卒率は低いと同時に、保護者との差もない。他国ではどうか。<図1>のグラフを見てほしい。

newsweekjp20260306002008.png

横軸に保護者、縦軸に小学校教員の大学院卒率をとった座標上に、日本を含む26カ国のドットを配置したものだ。日本は両軸とも低いので、原点の近くにある。教育大国と言われるものの、大学院の普及度は他国と比較して低いようだ。

斜線は均等線で、この線より上にある国は、保護者より教員の大学院卒率が高い国だ。26カ国中19カ国が該当し、上にある5カ国は保護者に大きく差をつけている。フィンランドでは保護者が31%であるのに対し教員では90%と、3倍もの開きがある。この国では大学院修士課程までが教員養成に組み込まれているからなのだが、高度専門職としての自負を教員に持たせるのに寄与しているだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

キオクシアHD株、2月の売買代金12兆円超 2位の

ビジネス

ベトナム、米警告無視し中国テックと新たな5G契約検

ワールド

イスラエル、イラン首都に大規模攻撃開始と表明 クル

ワールド

米国防総省、アンソロピックにリスク指定通知 契約業
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 4
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリン…
  • 5
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 6
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 7
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 8
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 9
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中