火葬NG、死は門出...移民問題で揺れる今こそ知っておきたい、イスラムの「死生観」
今こそ日本人に問いかけたいこと
死を、破滅ではなく「帰還」として見つめるとき、人の生は一層尊いものとなる。
終わりは静寂ではなく、神のもとへの永遠の旅のはじまりなのだ。そこに、イスラムが語る死の真の意味がある。
日本人とイスラム教徒は、それぞれ異なる弔いの形を持つ。それゆえ、2つの文化が弔いという深い営みを通して出会うとき、そこにはしばしば静かな違和感が生まれる。
死を見つめるまなざし、土葬や火葬といった魂を送る作法、その奥にある「生」への信仰。互いの背景を知らぬまま両者が出会ったとき、誤解やすれ違いといった小さな摩擦が、知らず知らずのうちに嫌悪を伴う壁を築いてしまう。
だからこそ問いたい。異文化コミュニケーションの中で生まれるその揺らぎを、私たちはどう受け止め、どう理解し合えるのか。「ここは日本だ」「郷に入れば郷に従え」といった表面的な議論ではなく、心の奥深くに潜む「見えない文化」を見つめ合いながら、共に語り、共に考えていくことが必要だ。
グローバル化と情報化の波に翻弄される現代において、求められるのは単なる「相互理解」ではない。
相手を知ろうとするだけでなく、互いの内にある知と感性を響かせ合う「相互知解」への道を歩むこと。それこそが、多様な世界に生きる私たちが分かち合うべき新たな祈りの形なのかもしれない。
【執筆者】アルモーメン・アブドーラ
エジプト・カイロ生まれ。東海大学国際学部教授。日本研究家。2001年、学習院大学文学部日本語日本文学科卒業。同大学大学院人文科学研究科で、日本語とアラビア語の対照言語学を研究、日本語日本文学博士号を取得。02~03年に「NHK アラビア語ラジオ講座」にアシスタント講師として、03~08年に「NHKテレビでアラビア語」に講師としてレギュラー出演していた。現在はNHK・BS放送アルジャジーラニュースの放送通訳のほか、天皇・皇后両陛下やアラブ諸国首脳、パレスチナ自治政府アッバス議長などの通訳を務める。元サウジアラビア王国大使館文化部スーパーバイザー。近著に「地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人」 (小学館)、「日本語とアラビア語の慣用的表現の対照研究: 比喩的思考と意味理解を中心に」(国書刊行会)などがある。
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