兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
RUSSIA’S DEATHONOMICS
一方で貧しい地方に暮らす女たちは兵士との結婚に、そしてかなりの確率で手に入る公的な弔慰金に期待することになる。それ以外に貧困から抜け出す手段がないからだ。
たとえ弔慰金が1000万ルーブルであったとしても、それは低賃金の仕事でほぼ一生働き続けて得られる給与の総額に相当する。ご都合主義と言うなかれ。これは貧者を肉弾とし、貧困を武器化する社会で生き延びるための合理的計算なのだ。
今のロシアはウクライナ戦争で多大な損失を被っている。確認されただけでも14万5000人以上のロシア人男性が戦死しており、さらに多くが身体の損傷などで二度と働けない状態になっている。
こうした損失はコロナ禍以来の急激な人口減をさらに悪化させ、ゆがんだインセンティブを生み出してもいる。遺族にとって、政府の弔慰金は単なる損失の補償ではなく、地域経済の破綻から身を守る保険として機能している。
「ブラックウィドウ」現象はロシア版「死の経済」の最も冷酷にして顕著な症状の一つにすぎない。見よ、今のロシアには戦争の永続を富の源泉とする新興中産階級がいる。入隊時のボーナスや高額な給与、途方もない死亡補償金を受け取る兵士とその家族がそうだし、そうした資金の流入で潤う地元の企業や、彼ら・彼女らの懐を狙う犯罪集団もそうだ。





