日本も他人事ではない...世界で広がる富の世代間格差、「市場の忍耐の限界」はどこにある?
THE GREAT BOOMER BAILOUT
ヨーロッパ諸国では、歳出削減策の一環としてベビーブーム世代の社会保障を縮小する計画が、軒並み撤回に追い込まれている。イギリスでは6月、キア・スターマー首相が与党内からも反発を受け、年金生活者に対する暖房費補助の打ち切りを断念した。これで推定14億ポンドの歳出削減が消えた格好だ。
しかしイギリスの年金生活者は、既にかなりしっかり守られている。毎年、物価上昇率か、平均賃金の上昇率か、2.5%のいずれか最も高い比率によって年金額が自動的に引き上げられるのだ。従って多くの年金生活者にとって、暖房費補助は、既に約束された年金増額分と比べるとごくわずかな金額だ。
フランスでは今年、440億ユーロの緊縮予算案をめぐり2人の首相のクビが飛んだ。教師や薬剤師、子供たちまで数十万人ともいわれる市民が街頭で政府に抗議した。
2つの祝日の廃止や社会給付の削減を提案したフランソワ・バイル首相は、9月に就任から9カ月で内閣総辞職を余儀なくされた。後任のセバスチャン・ルコルニュ(1年間で4人目の首相だった)は就任から27日、組閣から十数時間で総辞職した。
エマニュエル・マクロン大統領は23年に退職年齢を62歳から64歳に段階的に引き上げる年金改革法案を強行採決したが、左派政党などの激しい反発で見直しを迫られている。
スペインは、NATO加盟国は国防費をGDP比5%にするという目標について適用除外を求め、自国の福祉国家としての社会モデルと整合しないと主張した。ドイツでは5月に就任したフリードリヒ・メルツ首相が、欧州最大の経済大国ながら、もはや社会保障給付を賄う余裕がないと訴えている。





