最新記事
BOOKS

イエスとはいったい何者だったのか?...人類史を二分した男の正体

2025年10月3日(金)09時45分
ミシェル=イヴ・ボロレ、オリヴィエ・ボナシー


(1)イエスは存在したことがなく、後世につくられた神話である

18世紀以降の一部の無神論者と作家ら(ドイツ人神学者ブルーノ・バウアー、フランス人哲学者ポール=ルイ・クーシュー、現代フランスの哲学者ミシェル・オンフレなど)の主張。

(2)イエスは偉大な賢人だった

フランスの宗教家エルンスト・ルナンや第3代アメリカ大統領トーマス・ジェファーソンの説で、現在は多くのフリーメイソンと一部の大衆が主張している。

(3)イエスは頭の狂った妄信者

19世紀以降の哲学者(ダーフィト・シュトラウス、ニーチェ)と、ついで20世紀の医師や精神科医(ビネ=サングレ、ウィリアム・ハーシュ)に支持された主張。

(4)イエスは挫折した冒険家

ユダヤ教の聖典タルムードやユダヤ主義の主張。

(5)イエスは預言者

初期のイスラム教徒と、一部の同世代人の主張。

(6)イエスは救世主であり、並外れた人物だったが、ただの人間

異端派とされるアリウス派やカタリ派の主張。

(7)イエスは救世主で、神の子である

キリスト教徒と救世主ユダヤ教徒(*3)の主張。


 

ではこれから、この7つの答えの可能性を、厳密に深く検討していくことにしよう。参照するのは歴史的事実と聖書、理性、そして非難する側の主張だ。特に批判者たちの支離滅裂で矛盾した告発から、より重要なデータがもたらされることになる。

7つそれぞれの仮説の価値を適切に判断するには特別な能力は必要なく、なんらかの資格や専門的知識も不要である。本書『神と科学 世界は「何」を信じてきたのか』の前半の、より専門的で科学的な章とは逆で、ここでは全員が自分で結論を導くことができるはずだ。

繰り返しになるが、「イエスは何者か?」という問題は、誰にとっても避けて通れないものだ。読者のみなさん、私たちと一緒に、段階を踏んで検討していこう。

【注】
(*1) Ferdinand Prat, Jésus Christ, sa vie, sa doctrine, son oeuvre(Paris: G. Beauchesne, 1938).
(*2) 一部の少数派、例えば、現在800万人の信者がいるエホバの証人は、イエスを大天使聖ミカエルの化身としているが、ここでは取り上げない。
(*3)イエス(イシュア)をイスラエルのメシアと認めた上でユダヤ教を実践しているユダヤ人。


ミシェル=イヴ・ボロレ(Michel-Yves Bolloré)
ITエンジニア。理学修士、パリ・ドフィーヌ大学ビジネス経営学博士号・経営管理博士号を取得。1981年から1990年まで兄とともにボロレ・グループの経営に参画し、産業部門を統括した。1990年には、機械産業を中核とするフランス・エソールという自社グループを設立。

オリヴィエ・ボナシー(Olivier Bonnassies)
エコール・ポリテクニーク(理工科学校X86)、パリ経営大学院およびパリ・カトリック学院(神学学士)卒業。複数の会社を設立した起業家。20歳まで信仰心を持っていなかったが、現在では、信仰の合理性に関するさまざまなテーマについて20冊に及ぶ書籍、ビデオ、舞台、脚本、記事、ニュースレター、インターネットのサイト記事を執筆している。


newsweekjp20251002060802.png

 『神と科学 世界は「何」を信じてきたのか
  ミシェル=イヴ・ボロレ/オリヴィエ・ボナシー[著]
  鳥取絹子[訳]
  日経BP[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


ニューズウィーク日本版 2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月7日号(9月30日発売)は「2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡」特集。投手復帰のシーズンも地区Vでプレーオフへ。アメリカが見た二刀流の復活劇

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

焦点:シリコンバレーから兵器開発へ、「戦争」に軸足

ビジネス

安川電機、今期の営業益予想を上方修正 足元の需要な

ビジネス

日経平均は大幅続伸、終値ベースの最高値更新 半導体

ワールド

米関税の内外経済への影響、不確実性は「依然かなり大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 6
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 7
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中