「教会が安全な場所でなくなった」トランプ政権による拘束を恐れる移民信者たち

イエス・キリストの最後の晩餐に由来し、信者たちがキリストの血と肉を象徴するワインとパンを分かち合う「聖餐式(せいさんしき)」は、キリスト教会の日曜礼拝における最も神聖な儀式の1つだ。写真はオンラインで式に参加するドリス・アギーレさん。8月31日、イリノイ州のシカゴで撮影(2025年 ロイター/Audrey Richardson)
イエス・キリストの最後の晩餐に由来し、信者たちがキリストの血と肉を象徴するワインとパンを分かち合う「聖餐式(せいさんしき)」は、キリスト教会の日曜礼拝における最も神聖な儀式の1つだ。しかし米中西部シカゴの郊外に住むドリス・アギーレさん(59)は今月7日、自宅の居間にある食卓に1人きりで座り、この儀式を行っていた。
トランプ政権が進める厳しい不法移民取り締まりの影響で礼拝に行けなくなり、教会が昨年12月下旬から始めたオンラインでのスペイン語による礼拝サービスを利用しているからだ。
バイデン前政権は、教会を学校や病院などとともに移民当局が捜査のために踏み込むことができない場所として指定していたが、トランプ大統領は就任初日にこの方針を撤廃。国土安全保障省は1月21日の声明で「犯罪者たちはもはや逮捕を逃れるために米国の学校や教会を隠れ場所にするのは不可能になる」と宣言した。
ロイターが取材した米国全土の牧師や教会指導者の話では、こうした政策転換に加え、連邦当局が単に滞在資格を満たしていないとの理由でより多くの人々を拘束する動きが出てきたことで、多くの移民は教会が安全な場所でなくなったと考え、足を遠ざけるようになった。拘束されるのを恐れて礼拝への参加者は減り、信者間のつながりを維持するのが難しくなっているとともに、彼らが頼りにしている教会による食料や法的助言の提供も妨げられているという。
ホンジュラス生まれのアギーレさんは、帰化した米国市民と結婚しているものの、自身は合法的な滞在資格はない。彼女の弁護士によると、25年間も米国で暮らしているにもかかわらず、アギーレさんは最初の裁判期日にうっかり出頭しなかったため強制退去命令が出され、その後訴訟を再開しようとしたが却下されてしまった。