最新記事
アメリカ政治

アメリカは「一族企業」になるのか...「私が望むことは何でもできる」暴走する大統領権限とその限界

2025年9月1日(月)15時10分
トランプ米大統領

8月29日、トランプ米大統領(写真)が連邦政府機関のあらゆる業務に及んで自身の権限を拡大しようとする動きに歯止めがきかなくなってきた。ホワイトハウスで8月撮影(2025年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ米大統領が連邦政府機関のあらゆる業務に及んで自身の権限を拡大しようとする動きに歯止めがきかなくなってきた。8月最終週には連邦準備理事会(FRB)のクック理事、疾病対策センター(CDC)のモナレズ所長、鉄道事業を監督する陸上運輸委員会(STB)のプリマス委員に相次いで解任を通告し、そうした権限をどこかで行使できるのかを試しているかのようだ。

これらの措置からは、通常は政治的な影響から独立した立場になると見なされる機関にまで影響力を及ぼしたいというトランプ氏の願望が透けて見える。


 

複数の専門家は、一連の解任通告によって、民間への有益な情報や大統領向けに専門知識を提供しつつ、特定政党の政策に左右されずに業務を遂行するFRBやCDCなどへの信頼が損なわれかねないと懸念を示す。この状況を許せば、他の独立機関の足場も危うくなるかもしれない。

連邦政府の機能強化と民主主義の発展を提唱する団体「パートナーシップ・フォー・パブリック・サービス」の代表者を務めるマックス・スティア氏は、「悪い方へ向かう新たな潮流で、大統領による著しい権力の掌握を物語る。大統領には多くの権限があるが同時にさまざまな限度がある。現在の大統領にはそうした限度をわきまえていない」と指摘した。

ホワイトハウスの高官らは、トランプ氏が法的に認められた権限の範囲で行動し、有権者に託された政策課題を実行しようとしていると反論する。政権はモナレズ氏とプリマス氏の解任について、トランプ氏の政策課題にそぐわず、CDCに関しては中核的な使命に専念させることが理由だと主張した。

関係者の話では、モナレズ氏は科学的証拠と矛盾すると考えるワクチン政策変更に抵抗したもようだ。プリマス氏は、交流サイト(SNS)への投稿が鉄道と無関係のトランプ政権の政策を批判したと読める内容を含んでいた。

インタビュー
現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中