最新記事
戦争

なぜ「真珠湾」攻撃は世界を変えたのか?──Newsweekが記録した「奇襲」の衝撃【note限定公開記事】

For All-Out War

2025年8月13日(水)08時05分
ニューズウィーク日本版編集部
1941年12月、日本軍の攻撃で真珠湾にて転覆した米戦艦オクラホマ

真珠湾で日本軍の攻撃を受けて転覆する戦艦オクラホマ ULLSTEIN BILD/GETTY IMAGES

<1941年12月、日本軍による米太平洋艦隊拠点への電撃的「奇襲」は孤立主義のアメリカを大戦に引きずり込んだ>

真珠湾の米太平洋艦隊への日本軍の奇襲(surpriseattack)を、本誌米国版1941年12月15日号は、「全面戦争に向けて国家の総力を結集」という特集記事で報じた。

日米開戦によって、アメリカは自動的にドイツ、イタリアの枢軸国とも交戦状態に入った。ただ日本に対しては、中国をはじめ東南アジアの欧米植民地の包囲網で制圧できると考えていたようだ。

この時点で欧州戦線にも参戦していなかったアメリカは、この大戦がどれほど凄惨なものになるか、まだ見えていなかった。

即時に「国家総動員体制」

真珠湾の太平洋艦隊に対する 12月7日朝の日本の奇襲攻撃で、アメリカは最後の主要非戦国という立場を放り投げ、戦争へと突入した。

攻撃はアメリカの太平洋における主要な要塞を不意打ちにし、狭い湾内に停泊していた軍艦艇に深刻な打撃を与えただけでなく、地上の空軍基地の戦闘機、駐屯部隊、ハワイ・オアフ島の民間人も被害を受けた。

真珠湾攻撃から 24時間以内に、シンガポールの英軍基地、ウェーク島、ミッドウェー島、グアムの米軍基地、マニラをはじめフィリピン各地が爆撃を受けた。

さらに香港と英領マレー半島が侵攻を受け、タイは仏領インドシナの基地を出た日本軍の攻撃を受けて早々に敗北した。

検閲によって、真珠湾その他の被害の詳細は不明だが、米国内への即時の影響は、これで意見の相違が一掃されるということだ。経済的には、「砲弾かバターか(軍事費か民生費か)」という希望的な議論は消えた。

ワシントンでは、日本の真珠湾攻撃を許した海軍が批判を浴びている。しかし大統領のラジオ演説を待つまでもなく、アメリカが取るべき道は一つ。米軍の艦艇や軍用機は、この屈辱の報復のために出撃した。ただ当初から海軍の検閲は厳しく、情報源はホワイトハウスに限られている。

アメリカの参戦によって、今や全世界が戦争へと突入した。イギリスはアメリカに先んじて日本へ宣戦布告。既に蘭領東インド、オーストラリアも足並みをそろえ、西太平洋では日本への「対枢軸国包囲網」が形成されている。

一方、大西洋側では、日本と枢軸を組むドイツとイタリアがアメリカ攻撃の機会を待ち構えている。両国は直ちにアメリカにも宣戦布告するだろう。唯一、ロシアの立ち位置だけが依然として謎のままだ。

戦争の様相は、一日もしないうちに劇的に変化した。 12月8日に議会上下両院が開かれたのは、宣戦布告ではなく戦争を承認するためだった。

7日は、アメリカの歴史上、暗黒の日だ。アメリカを危険と緊張の未来へと突き落とした。

太平洋での「電撃戦」

日本の攻撃はハワイ時間日曜、午前8時10分に始まった。

50機から150機の急降下爆撃機と魚雷搭載爆撃機が、戦闘機に護衛され、真珠湾西方の山間部を轟音を上げながら飛行した。爆撃機の翼には、赤い日の丸のマークが描かれている。目指すは米太平洋艦隊の拠点、真珠湾だ。

日本はドイツの「電撃戦」を模倣した。標的は、太平洋全域で最強の敵基地。奇襲でここに深刻な打撃を与えれば、極東で連合国と対峙する際に、後方から反撃される危険を減らすことができる。

これはジャップ(編集部注:日本人に対して当時使われていた蔑称)が1904年に日露戦争で用いたのと同じ手法だ。当時日本は、旅順港で開戦冒頭にロシア艦隊を無力化するため、魚雷艇で奇襲を行った。

夜の間にアメリカの哨戒を擦り抜け空母で標的に近づいた日本の爆撃機は、ホノルル市街には目もくれず、真珠湾に停泊する艦艇と陸上の米海軍、陸軍基地にある爆撃機への攻撃に集中した。

来たるべき戦争で日本に最も被害を与えるであろう戦力の撃破を目指したのだ。日本の爆撃機は激しい対空砲火を浴びたが、なぜ日本の空母が捕捉されなかったのか、なぜ米軍の艦艇と軍用機が不意打ちに遭ったのかは誰も説明できない。

理由は何であれ、この攻撃は痛手だった。

※本文中のファクトは本誌米国版に記事が掲載された当時のままとしています。

記事の続きはメディアプラットフォーム「note」のニューズウィーク日本版公式アカウントで公開しています。

【note限定公開記事】なぜ「真珠湾」攻撃は世界を変えたのか?──Newsweekが記録した「奇襲」の衝撃


ニューズウィーク日本版「note」公式アカウント開設のお知らせ

公式サイトで日々公開している無料記事とは異なり、noteでは定期購読会員向けにより選び抜いた国際記事を安定して、継続的に届けていく仕組みを整えています。翻訳記事についても、速報性よりも「読んで深く理解できること」に重きを置いたラインナップを選定。一人でも多くの方に、時間をかけて読む価値のある国際情報を、信頼できる形でお届けしたいと考えています。


ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

BIS、金と株価の同時バブルの可能性を警告

ワールド

トランプ氏、EUのX制裁金を批判 欧州は「悪い方向

ワールド

トランプ氏が120億ドルの農家支援策、関税収入充当

ビジネス

SBGとエヌビディア、ロボティクス新興に投資検討 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    米、ウクライナ支援から「撤退の可能性」──トランプ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中