なぜ「真珠湾」攻撃は世界を変えたのか?──Newsweekが記録した「奇襲」の衝撃【note限定公開記事】
For All-Out War

真珠湾で日本軍の攻撃を受けて転覆する戦艦オクラホマ ULLSTEIN BILD/GETTY IMAGES
<1941年12月、日本軍による米太平洋艦隊拠点への電撃的「奇襲」は孤立主義のアメリカを大戦に引きずり込んだ>
真珠湾の米太平洋艦隊への日本軍の奇襲(surpriseattack)を、本誌米国版1941年12月15日号は、「全面戦争に向けて国家の総力を結集」という特集記事で報じた。
日米開戦によって、アメリカは自動的にドイツ、イタリアの枢軸国とも交戦状態に入った。ただ日本に対しては、中国をはじめ東南アジアの欧米植民地の包囲網で制圧できると考えていたようだ。
この時点で欧州戦線にも参戦していなかったアメリカは、この大戦がどれほど凄惨なものになるか、まだ見えていなかった。
即時に「国家総動員体制」
真珠湾の太平洋艦隊に対する 12月7日朝の日本の奇襲攻撃で、アメリカは最後の主要非戦国という立場を放り投げ、戦争へと突入した。
攻撃はアメリカの太平洋における主要な要塞を不意打ちにし、狭い湾内に停泊していた軍艦艇に深刻な打撃を与えただけでなく、地上の空軍基地の戦闘機、駐屯部隊、ハワイ・オアフ島の民間人も被害を受けた。
真珠湾攻撃から 24時間以内に、シンガポールの英軍基地、ウェーク島、ミッドウェー島、グアムの米軍基地、マニラをはじめフィリピン各地が爆撃を受けた。
さらに香港と英領マレー半島が侵攻を受け、タイは仏領インドシナの基地を出た日本軍の攻撃を受けて早々に敗北した。
検閲によって、真珠湾その他の被害の詳細は不明だが、米国内への即時の影響は、これで意見の相違が一掃されるということだ。経済的には、「砲弾かバターか(軍事費か民生費か)」という希望的な議論は消えた。
ワシントンでは、日本の真珠湾攻撃を許した海軍が批判を浴びている。しかし大統領のラジオ演説を待つまでもなく、アメリカが取るべき道は一つ。米軍の艦艇や軍用機は、この屈辱の報復のために出撃した。ただ当初から海軍の検閲は厳しく、情報源はホワイトハウスに限られている。
アメリカの参戦によって、今や全世界が戦争へと突入した。イギリスはアメリカに先んじて日本へ宣戦布告。既に蘭領東インド、オーストラリアも足並みをそろえ、西太平洋では日本への「対枢軸国包囲網」が形成されている。
一方、大西洋側では、日本と枢軸を組むドイツとイタリアがアメリカ攻撃の機会を待ち構えている。両国は直ちにアメリカにも宣戦布告するだろう。唯一、ロシアの立ち位置だけが依然として謎のままだ。
戦争の様相は、一日もしないうちに劇的に変化した。 12月8日に議会上下両院が開かれたのは、宣戦布告ではなく戦争を承認するためだった。
7日は、アメリカの歴史上、暗黒の日だ。アメリカを危険と緊張の未来へと突き落とした。
太平洋での「電撃戦」
日本の攻撃はハワイ時間日曜、午前8時10分に始まった。
50機から150機の急降下爆撃機と魚雷搭載爆撃機が、戦闘機に護衛され、真珠湾西方の山間部を轟音を上げながら飛行した。爆撃機の翼には、赤い日の丸のマークが描かれている。目指すは米太平洋艦隊の拠点、真珠湾だ。
日本はドイツの「電撃戦」を模倣した。標的は、太平洋全域で最強の敵基地。奇襲でここに深刻な打撃を与えれば、極東で連合国と対峙する際に、後方から反撃される危険を減らすことができる。
これはジャップ(編集部注:日本人に対して当時使われていた蔑称)が1904年に日露戦争で用いたのと同じ手法だ。当時日本は、旅順港で開戦冒頭にロシア艦隊を無力化するため、魚雷艇で奇襲を行った。
夜の間にアメリカの哨戒を擦り抜け空母で標的に近づいた日本の爆撃機は、ホノルル市街には目もくれず、真珠湾に停泊する艦艇と陸上の米海軍、陸軍基地にある爆撃機への攻撃に集中した。
来たるべき戦争で日本に最も被害を与えるであろう戦力の撃破を目指したのだ。日本の爆撃機は激しい対空砲火を浴びたが、なぜ日本の空母が捕捉されなかったのか、なぜ米軍の艦艇と軍用機が不意打ちに遭ったのかは誰も説明できない。
理由は何であれ、この攻撃は痛手だった。
※本文中のファクトは本誌米国版に記事が掲載された当時のままとしています。
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【note限定公開記事】なぜ「真珠湾」攻撃は世界を変えたのか?──Newsweekが記録した「奇襲」の衝撃
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