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BIS、金と株価の同時バブルの可能性を警告

2025年12月09日(火)08時16分

写真は国際決済銀行(BIS)本部。2021年3月、スイス・バーゼルで撮影。REUTERS/Arnd Wiegmann

Marc Jones

[ロンドン 8日 ロイター] - 金価格と株価が同時に急騰している相場について国際決済銀行(BIS)は8日発表した年次報告書で、金価格と株価がともにバブル相場になっている可能性が浮上していると指摘した。株式市場が人工知能(AI)やIT関連の銘柄上昇にけん引されている一方、金価格の今年に入ってからの上昇率は約6割と1979年以来の最大となる見通しだ。

BISは、金価格とS&P総合500種株価指数のともに「爆発的な上昇」が、この半世紀には見られなかった現象だとし、安全資産とされてきた金の役割が変化したかどうかの議論が活発化している。

シン・ヒョンソン経済顧問兼金融経済部長は「金の今年の値動きは、従来のパターンとは大きく異なる」とし、「今回の興味深い現象は、金が投機的資産に極めて近い性質を帯びた点だ」と言及した。

世界の中央銀行にとっての中央銀行と称されるBISは近年、株式市場がバブルになっている可能性があると警告を繰り返してきたが、金とともにバブルが形成されている場合には二重の懸念がある。

1つはもし株式と金が同時に暴落した場合には、投資家はどこに避難すればいいのかという問題が立ちはだかる。

もう1つは、中銀や他の準備資産が金の大規模な買い手となっている現状を踏まえると、金価格が暴落した場合に何を意味するのかということだ。

金価格は、新型コロナウイルス禍後の物価急騰が起きた2022年の2.5倍超の水準になっている。22年にはロシアによるウクライナ侵攻と、西側諸国による対ロシア制裁も重なった。

ただ、金上場投資信託(ETF)の価格は今年に入り、純資産価値(NAV)を上回り続けており、個人投資家が参入してバブル状態になっている可能性が取り沙汰されている。

BISは現状について「強い買い圧力と、裁定取引の障壁が組み合わさった状態」を示しているとの見解を示す。

シン氏は、中銀による購入が「金価格に非常に強気基調を明らかにもたらした」とし、「価格が実際にかなり堅調な動きを見せている時は、他の投資家が参入するのを目にするだろう。確かに個人投資家も(上昇相場に)参加しており、それは金だけにとどまらないことだ」と解説した。

<脆弱性の拡大>

BISはAI関連銘柄の過大評価や、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)が最近2割急落したことを踏まえて、「脆弱性の拡大」の警告を発した。

欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中央銀行)もこの数週間にAIバブルへの懸念を表明しており、投資家の楽観的な期待が裏切られた場合には急激に崩壊するリスクがあるとの見方を示す。

シン氏は、データセンターに巨額の投資を現在進めているAI企業が利益を稼ぎ出している点が、収益を上げていないIT企業の株価急落を招いた2000年代初頭の「ITバブル」との大きな違いだと指摘する。

一方、「根本的な問題」はこうした支出が長期的に見て正当であるとみなされるかどうかであり、市場にとってもう1つの重要な決定要因は来年の世界経済が持ちこたえられるかどうかだと言及した。

その上で「今のところは、経済活動は驚くほどの強靱さを見せている」と語った。

ロイター
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