24人全員リコール失敗、民進党に痛手──台湾に迫る「親中ねじれ国会」の行方
The Asian Swing State
──この結果は、親中勢力が台湾で盛り返していることを意味するか。
必ずしもそうではない。リコール派は、中国を訪問し、共産党幹部と会談する国民党議員はそれだけで何をやっているか分からない、不安だと批判を強めた。
ただ共産党の言う統一や、香港で採用された一国二制度には反対というのが国民党の公式の立場。議論がかみ合わない。今回の結果、野党が主導権を握る形になるが、ではこれで台湾が統一支持に向かうか、というとそうはならない。
──独立か統一かについて、台湾人は「現状維持」を支持する人がずっと一番多い。
台湾世論は広い意味での現状維持が多数派で、どちらの政党もこれをベースに政策を作っていく。ここから外れると選挙で勝てない。リコール直前の7月の調査でも、統一支持は6.4%で全然伸びていない。台湾人の独立・統一への意識は変わっていないと言える。
ただ、野党は中国との対話に積極的だ。野党が主導権を取ることで、中国との距離の取り方が変わる可能性がある。
──今回の結果に米中関係の変化が影響している可能性は。
今回の結果にドナルド・トランプ米大統領が直接影響したかどうか証明するのは難しい。ただ背景としては無視できないところもある。
頼総統の支持率が、リコール投票後激減している(34.6%、台湾メディア美麗島電子報)。3月には55.6%と比較的安定していた。4月に急落しているが、これはトランプ政権が台湾に向けて32%という高い関税率を発表したのが直撃した。
リコール投票後に、中南米に外遊する途中のトランジットでの米入国を拒否されたという報道があり、関税率も日韓の15%より高い20%と発表された。今後逆風が強まるのは避けられない。