ISが狙う「イラン弱体化の隙」──混乱に乗じて広がる新たな脅威

A RENEWED ISIS THREAT

2025年7月2日(水)10時41分
トム・オコナー(外交問題担当シニアライター)

アフガニスタンではアメリカが支援する政府とイスラム主義勢力タリバンの戦争が続き、その中でIS系の組織「ISホラサン州(IS-K)」が小規模ながらも活発な拠点を築いた。

シリア暫定政府と同様にアフガニスタンのタリバン政権も、国内のISを根絶すると宣言している。だがISは複数の国にまたがって拠点や活動基盤を維持し続けており、イランやパキスタン、さらに遠く離れた地域でも攻撃を行っている。


ISホラサン州は昨年1月、イラン南東部ケルマンで行われたソレイマニの追悼式典を自爆テロで攻撃し、100人以上を殺害。2カ月後にはモスクワ郊外のコンサートホールを襲撃し、約145人を殺害した。

モスクワの事件の容疑者は、タジキスタン出身の人物と特定された。ISはタジキスタンで少なくとも10年前から組織的な勧誘活動を行っているとみられる。近年では中国、イラン、ロシアと国境を接する中央アジア全域で少なくとも数百人がISに参加したと推定されている。

特にイランでは、アラブ人やアゼルバイジャン人、バルーチ人、クルド人で構成される大規模な非ペルシャ系コミュニティーに民族分離を求める動きがあり、彼らがISと手を組む恐れがある。

米国家情報長官室の元上級スタッフで、現在はインテリジェンス分析企業フラッシュポイントの幹部アンドルー・ボリーンも、イランの治安機構が弱体化した場合、ISやその関連組織が勢いを増す可能性があると考えている。

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