韓国ソウル市、10月に完全非接触「タグレス」交通システム導入へ カードをかざさず電車やバス乗車が可能に
30分以内の乗り換えは割引きに
交通カードは利用者と運行会社の双方にメリットがある。利用者は現金を用意する必要がないうえ、乗換割引も適用されるからだ。これは地下鉄の改札口を出た後やバス降車後、日中は30分以内、夜間は1時間以内に乗り換えると適用される。例えば、自宅や職場からA地点に行き、A地点からB地点、B地点からC地点など複数箇所を訪問するとき、A・B・Cそれぞれ下車から30分以内に次の交通機関に乗車すると、乗車回数は4回でも運賃計算は1回となる。
ソウル市は2023年、地下鉄の初乗り運賃を1250ウォンから1400ウォンに引き上げ、2025年6月28日、ふたたび150ウォン値上げして1550ウォンとしたが、カードで支払う利用者は値上げに対して鈍感な傾向があり、運行会社は弾力的な運賃設定が容易となるのだ。
一方で交通カードの普及は良いことばかりではない。障がい者や国家有功者などは地下鉄の改札で証明書を提示すると無料となるが、カード化の進展に伴って改札口が無人となったことから、証明書を見せる駅員がいないという問題が生じている。
タグレスシステムにも課題が
冒頭で紹介したタグレスシステムは2つの課題が指摘されている。まずは認識エラーの問題だ。一人ずつ改札を通過する地下鉄と違って、市内バスは通勤ラッシュ時など狭い空間に多数の乗客が密集する。ソウルの市内バスは前扉から乗車して後扉から降車するのが原則だが、通勤ラッシュ時など前扉が混み合っていると後扉から乗車する人や前扉から降車する利用者も少なくない。認識率を高めるため感度を上げると、乗車するバスとは異なるバスが認識する可能性もある。
また無賃乗車対策も課題として指摘されている。カードタッチ方式は物理的な接触で乗車の意思が明確だが、タグレス方式は意図しない課金や不正利用の対策が求められることになる。
そうはいっても、身体が不自由な障がい者や高齢者、両手が荷物で塞がっている人などにとって利便性が高くなるだろうことは間違いない。