最新記事
出生率

先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけが少子化しない理由

FAITH AND FERTILITY

2025年6月13日(金)14時51分
デービッド・ローゼンバーグ(イスラエルのハーレツ紙コラムニスト)

超正統派以外のユダヤ人には、より現代的な生活様式を取り入れた正統派ユダヤ教徒から、完全に世俗的な暮らしを営むユダヤ人まで、幅広い宗教的態度を持つ人が含まれる。このグループの22年の出生率は2.45だった。

このうち、人口を維持するのに必要とされる出生率を下回ったのは、「完全に世俗的」と自認するユダヤ人女性だけだった。

ナショナリズムも一因

こうして見ると、やはりユダヤ教徒としての信心深さが出生率と大きく関係しているようだ。実際、敬虔なユダヤ教徒ほど子だくさんである可能性は高い。ただ、世俗的な女性でさえ、20〜22年の出生率は1.96と、先進国の女性と比べると高かった。これは一体なぜなのか。


もちろん、先進国の少子化の原因とされる状況はイスラエルにも存在する。

家計収入に占める住居費の割合はOECD加盟国で中程度だし、政府が格別手厚い子育て支援をしてくれるわけでもない。教育水準や就労率を考えれば、イスラエルの女性たちも先進国の女性たちのように、出産を減らしてもおかしくない。

それがなぜ起きていないのか。

その答えは、宗教とナショナリズムのミックスにあるようだ。カナダのカルガリー大学公共政策大学院元教授ケビン・マクイランは04年の論文で、異なる民族や宗教グループとの間に対立や競争が続いているとき、宗教とナショナリズムが人々の日常生活にとりわけ大きな影響を与えるようになると説明している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中