先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけが少子化しない理由
FAITH AND FERTILITY
従って、世界のトレンドに反してイスラエルの出生率が上昇している理由も、宗教が大きく影響している可能性が高そうだ。
その第1の要因として挙げられるのは、超正統派ユダヤ教徒の存在だ。全人口に占める割合は12%程度だが、20〜22年の出生率は6.48にも達した。参考までに、西アフリカの国ニジェールの出生率が6.64だ。
超正統派の出生率が突出して高いのは、その極めて特殊な生活様式と関係している。彼らは熱狂的な信仰と厳格な価値観(子供をたくさん持つこともその1つだ)を中心に、閉鎖的な生活共同体を形成している。
ただ、そんな超正統派の出生率も、この20年間でピークの約7.3よりは低下してきた。これは、男性が成人後も宗教的な学びを続けるために、女性は子育てをしながら働いて家族を養わなければならない伝統と関係しているようだ。この重責が出生数を減少させている可能性がある。
第2に、イスラエルの人口の約20%を占めるイスラム教徒など宗教的マイノリティーの出生率も高い。2022年のイスラム教徒女性の出生率は2.87だった(とはいえ、20年前は4.55だったから、かなり低下してきたのも事実だ)。
一方、イスラエルに住むユダヤ人全体の出生率を見ると、02年は2.65だったが、22年には3.06へと上昇している。これを牽引するのは超正統派だが、その他のユダヤ人の出生率はどうなっているのか。