大胆奇襲「クモの巣作戦」──ロシアの戦略爆撃機を壊滅させた1年半の計画

Ukraine’s Daring Raid

2025年6月10日(火)18時01分
フランツシュテファン・ガディ(英国際戦略研究所研究員)

今回の作戦は新しい戦争形態の幕開けとも称賛されているが、真の意義は別のところにある。ウクライナはヨーロッパの戦争の古典的な戦術である奇襲攻撃を、21世紀版にアップデートしたのだ。

ヨーロッパ全土でかつて主要な軍事作戦だった奇襲攻撃は通常、隠密潜入、急襲、迅速な撤退という段階を経て展開される。劣勢の国が強敵に圧力をかけ続けるためにしばしば採用されてきた。


近代の奇襲作戦は1940年、イギリス軍がフランスでドイツ軍に壊滅的な敗北を喫した後、ウィンストン・チャーチル英首相が「ヨーロッパを燃え上がらせろ」と命じたことにさかのぼる。

それを受けて設立されたのが、ドイツ占領下のヨーロッパで妨害工作とレジスタンス活動を行う特殊作戦執行部(SOE)だ。

歴史上、こうした大胆な作戦の例はほかにも数多く存在する。七年戦争中の1757年10月、ハディク・アンドラーシュ率いるオーストリア軍は、主にハンガリーの騎兵隊から成る小規模で機動力の高い部隊を使い、ベルリンに大胆な奇襲攻撃を行った。

数で劣っていたにもかかわらず、ハディクの部隊は相手の不意を突いて同市を一時占領し、多額の金品を奪って撤退した。

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