大胆奇襲「クモの巣作戦」──ロシアの戦略爆撃機を壊滅させた1年半の計画

Ukraine’s Daring Raid

2025年6月10日(火)18時01分
フランツシュテファン・ガディ(英国際戦略研究所研究員)

航空戦力を使った近代的な奇襲は、第2次大戦で初めて本格的に行われた。1940年11月、英海軍は軽空母イラストリアスから発進した旧式の複葉機「フェアリーソードフィッシュ」21機のみを使って、イタリアのタラント港に停泊していた同国艦隊を急襲。

戦艦3隻を無力化するなど、少数の航空機による大きな作戦効果を示した。

42年3月には、英特殊部隊が爆薬を積んだ駆逐艦を使い、フランスのサン・ナゼール港にあるドイツ軍の乾ドックを破壊。44年にはドイツ軍戦闘機がウクライナ中部ポルタワに駐留する連合軍の爆撃機編隊を急襲し、甚大な人的被害と航空機の損害をもたらした。


根本的に言えば、ウクライナのクモの巣作戦は、大胆な奇襲という長い伝統を踏襲したものだ。新時代の幕開けを告げるものではなく、長年続く戦術の最新の形にすぎない。

だが一方で、今回の奇襲は、ドローンなどの新技術によってインパクトの大きい長距離の奇襲が容易になったことを示している。

後方深くの軍事資産やインフラは攻撃から免れるという思い込みは、ウクライナによって打ち砕かれた。

ロシアは今後、貴重な資源を費やして空軍基地など重要施設を強化し、航空機などを分散した場所に移動させなければならない。強固で多層的な対ドローン防衛の必要性も喫緊の課題となるだろう。

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