大胆奇襲「クモの巣作戦」──ロシアの戦略爆撃機を壊滅させた1年半の計画

Ukraine’s Daring Raid

2025年6月10日(火)18時01分
フランツシュテファン・ガディ(英国際戦略研究所研究員)

さらに、A50早期警戒管制機も損害を受けたとみられ、事実であれば、将来のNATOとの戦争において複雑な航空作戦の調整が難しくなる。

心理面でも、ウクライナはロシアの威信と信頼性に重大な打撃を与えた。ロシアの軍事的優越性を強調する物語を揺るがし、ロシアの軍事力の中枢を攻撃する能力を持っていることを示したのだ。


ウクライナがロシアと同等の兵器体系を保有する必要がないことも、改めて証明された。兵器を搭載するのは小型で低コストの装置でも、重要度の高い目標に深刻な損害を与えることができる。

戦争継続の莫大なコスト

ただし、奇襲作戦だけで戦争に勝つことはできない。ウクライナが今後数カ月にわたり前線でロシア軍の戦力を効果的に消耗させることができ、ロシアの指導部が莫大なコストと限定的な結果を前に、戦争を継続する価値を考え直すかどうか。それが最終的に戦争の行く末を決めるだろう。

ロシアにとって、前線から遠く離れた場所で代替が困難な戦略的資産が重大な損失を被ったことは、この戦争の代償が割に合わない水準に達しつつあるという認識へと、わずかながら傾くことになるかもしれない。

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