最新記事
ドローン

大胆奇襲「クモの巣作戦」──ロシアの戦略爆撃機を壊滅させた1年半の計画

Ukraine’s Daring Raid

2025年6月10日(火)18時01分
フランツシュテファン・ガディ(英国際戦略研究所研究員)
ロシアを襲ったドローン作戦の本当の成果

ロシア領内でウクライナのドローンの攻撃を受けたロシア軍機(6月1日にウクライナ保安庁の関係者が公開した動画より) SOURCE IN THE UKRAINIAN SECURITY SERVICEーAP/AFLO

<全土に展開していた爆撃機を破壊──。古くて新しい奇襲作戦で、戦争の流れは変わるのか。だがそれはロシアによる報復とエスカレーションのリスクを伴う危うい賭けでもある>

6月1日夜、ウクライナはロシア領内の奥深くで大胆なドローン(無人機)作戦を実行した。ウクライナの発表によると、この「クモの巣」作戦でロシア軍の戦略爆撃機41機が被弾し、少なくとも13機が完全に破壊された。

注目すべきなのは、核搭載可能な最新鋭のTu160爆撃機をあえて標的とせず、ウクライナの都市に対する通常型巡航ミサイル攻撃で広く使われているTu95とTu22Mを優先的に狙ったことだ。


ウクライナは自爆攻撃を仕掛けるカミカゼ型のFPVドローン(操縦士が飛行中の映像を見ながら遠隔操作するドローン)117機を投入。

北極圏の不凍港ムルマンスクや、ウクライナ国境から約8000キロ東のアムール地方など、複数のタイムゾーンをまたいでロシア領内の空軍基地を同時に攻撃したとされる。

作戦は1年半をかけて準備された。ドローンはロシア国内にひそかに運び込まれ、木製コンテナに隠してトラックに積まれた。トラックの荷台の屋根は遠隔操作で開閉できるようになっていた。

ウクライナの工作員は積み荷が何かを教えずにロシア国内で運転手を手配し、標的となる空軍基地の近くまで運ばせた。ロシア人の運転手もいたという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

威圧的貿易政策で不均衡解消できず、国際ルール尊重を

ワールド

ゼレンスキー氏、世界遺産の大聖堂損傷でロシアを非難

ビジネス

国内企業物価5月は前年比3.2%上昇、6カ月ぶりに

ワールド

NJ州知事選、民主党候補指名はシェリル下院議員 共
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 3
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるのか?...「断続的ファスティング」が進化させる「脳」と「意志」
  • 4
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 5
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 6
    「白鵬は、もう相撲に関わらないほうがいい」...モン…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    まさか警官が「記者を狙った?」...LAデモ取材の豪リ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中