「大統領になろうとしたのは間違いだった」 誰も残れない韓国大統領制、憲法改正への期待高まる
議員内閣制への移行を求める声も
米国をはじめとする再任制大統領は1期目の成果が再任を左右する。成果が認められると続投できるが、成果がないか、まして本人や側近が問題を起こすと再任はありえない。再任は政治力に加えてモラルも問われるが、単任制の韓国大統領は良くも悪しくも1回きりだ。また施策の多くは定着するまで時間がかかるが、任期後半の施策等は、国民に定着する前に大統領が変わることになる。政権政党が交代すると方針が180度変わり、破棄になる施策が少なくない。
少数意見として、議員内閣制を提唱する人もいる。日本や英国などが採用している議員内閣制は韓国大統領制の対極といえるだろう。韓国大統領は憲法により国家元首とされ、行政権と軍の統帥権も大統領に帰属する。司法の長の任免権や国会が議決した法律案の再議を求める権限も有し、すなわち立法、行政、司法、軍事の4権のすべてに関与する強大な権限があるうえ、途中解任は容易ではない。
一方、議員内閣制を採用する日本の首相は進退はもとより施策についても国会の承認が原則で、国会で不信任が可決されると辞職するか衆議院を解散して国民の真意を問うかいずれかだ。日本憲政史上、任期満了に伴う衆議院総選挙は1度しかなく、議院内閣制は不安定という意見もある。
人気投票に陥りやすい大統領制
国民の意に添わない首相が誕生することがある日本と違い、国民の直接選挙で選出される大統領は国民の意向を反映する反面、人気投票に陥りやすい。直近30年の日本の総理大臣14人中、十分な閣僚経験を有していないのは村山富市と鳩山由紀夫の2人だが、就任前に1年以上の閣僚経験を持つ韓国大統領は崔圭夏が唯一だ。政治経験や資質に関係なく選挙時の人気によって強大な権力を握るのだ。
大統領制を変更するためには憲法の改正が必要で、国会在籍議員3分の2以上が改憲案を承認した後、国民投票で是非を問うとされている。実際、戒厳令とその後の大統領罷免という流れを受けて、4月7日禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長が大統領選と憲法改正の国民投票の同時実施を提議した。ただ、これについては議院内閣制への改憲を主張する国民の力を利すると警戒した共に民主党から反対の声が多く、立ち消えになってしまった。このため6月3日に実施される大統領選で国民投票が実施されることはなく、憲法改正の議論は次期大統領に委ねられることになるだろう。

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