最新記事
犯罪

さらなる暗黒地域が...ミャンマー詐欺拠点「大救出劇」で浮き彫りになったサイバー詐欺産業の脅威

SOUTHEAST ASIA’S SCAM INDUSTRY “CRACKDOWN”

2025年3月12日(水)17時00分
ジェイコブ・シムズ(ディプロマット誌コラムニスト)
ミャンマーのミャワディにある詐欺拠点KKパークに監禁され、犯罪行為に従事させられていた人々

ミャンマーのミャワディにある詐欺拠点KKパークに監禁され、犯罪行為に従事させられていた人々(2月26日) REUTERS

<ミャンマー国境地帯で人身売買被害者である外国人が解放されたが、さらに闇深い地域が存在する>

肥沃で広大なメコン川流域に、まさか巨大なサイバー詐欺団地があったとは。ミャンマーの南東部に位置し、タイとの国境に接するカイン(カレン)州の町ミャワディで2月、謎の犯罪組織に監禁されていた外国人約1万人が解放され、近く本国に送還されるという。しかも最初に救出された260人中258人までは人身売買の被害者とされる。この割合が全体にも当てはまるなら、史上最大の人身売買被害者救出劇となる。

実現すれば多くの人が苦しみから解放されることになる。しかも彼らは、英エコノミスト誌の言う「世界で最も危ない犯罪産業」についての貴重な情報源となり得る。


だが、そんなにうまくいく保証はない。前途にはさまざまな障害が立ちはだかっている。そこから見えてくるのは、なぜ東南アジアのこの地域におけるサイバー詐欺産業の撲滅が困難であるか、そしてどんなに困難でもこの人道に反する犯罪的ビジネスモデルを撲滅することが、周辺各国と世界全体の安定と利益につながるかということだ。

最初に注意しておきたいのは、この「救出」劇を主導しているのがミャンマーの少数民族武装勢力のカレン国境警備隊(BGF)と民主カレン慈善軍(DKBA)であることだ。彼らはサイバー詐欺組織の拠点のある一帯を実効支配しているが、一方で詐欺組織からの上納金に依存しており、その撲滅どころか存続を願っている。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中