命がけの6日間――戦場からの脱出作戦【現場ルポ】 戦火のウクライナ、広がる兵役逃れの実態

DRAFT DODGING PLAGUES UKRAINE

2025年2月25日(火)10時34分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

報じたのは、12年に設立された独立系報道機関「スリドゥストボ・インフォ(調査情報)」だ。

記事は、23年12月にビチュクの妻がドニプロ川を臨む一等地のマンションを購入したこと、購入申告書に記載された金額が相場の半額だったこと、彼の母親も高額の不動産を複数所有していること、公務員であるビチュクの収入でそれらを購入するのは無理なことなどを指摘し、「高級物件の購入資金はどこから?」と疑問を投げかけた。


汚職報道の記者に招集令状

公開の3日前、取材・執筆をした27歳の男性記者が事件に遭う。夜に立ち寄ったショッピングセンターで突然、招集令状を提示されたのだ。

スリドゥストボ・インフォはショッピングセンターの防犯カメラ映像を入手し、分析した。その結果、徴兵事務所の担当者が記者だけを狙っていたことが判明した。さらに調査を重ねると、徴兵事務所に指示をしたのはビチュクの部下だった疑いが浮上した。

スリドゥストボ・インフォは国家汚職防止庁に苦情を申し立てた。自社を含め複数のメディアがこの問題を報じると、SBU長官はビチュクの職務を停止し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はビチュクを部長職から解任。だが5カ月後、警察当局はビチュクについて問題はなかったと結論付けた。

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