最新記事
階層格差

富裕層ほど政治参画への意識が高く、その傾向は子ども世代に引き継がれる

2025年2月19日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
投票箱

家庭の経済状況と政治参画の意識には相関関係が見られる photoAC 

<政治的関心の「階層格差」を是正するために、学校での主権者教育・公民教育の充実を>

アメリカではトランプ新政権が発足し、前政権とはかなり違った政治を行おうとしている。その是非はともかく、政策というのはどういう人が為政者になるかによって大きく変えられる。それだけに、為政者を選ぶ選挙がきわめて重要になる。

選挙での投票率は、若年層より高齢層で高い。候補者は後者が喜びそうな公約を掲げ、前者が望む雇用対策や教育振興などは二の次にされがちだ。また、規制緩和や所得税・法人税の軽減を望む人がいる一方で、富の再分配の強化を願う人もいるが、富裕層では前者、貧困層では後者の比重が高い。


今の日本は前者の流れで動いているように見えるが、選挙での投票率には「階層格差」があるのかもしれない。2020年に国立青少年教育振興機構が実施した調査から、その実態を明らかにできる。対象の高校生を、家庭の経済状況(自己申告)に依拠して3つのグループに分け、「親は選挙に行っているか」という問いへの回答を帯グラフにすると、<図1>のようになる。

newsweekjp20250219015152-f398e55637fb66a9cefbc02445c2b64a5e397016.png

きれいな左下りの傾向が見られる。親が選挙にいつも行くという生徒の割合は、裕福な層では60.2%、普通の層では52.2%、経済的に厳しい層では41.6%となっている。これは高校生の親年代のデータだが、全国民で見ても、こうした投票行動(率)の階層格差があることは想像に難くない。

富裕層ほど、各種の情報に触れる機会が多い、政治的関心が高い、政策実務に携わっている人が多い、さらには政治家(団体)とのコネクションがある人が多いなど、理由はいろいろ考えられる。過去最高の税収の内訳を見ると、逆累進の消費税の比重が高まり、所得税や法人税は減っているのだが、国民の中の偏った層の意向が反映されているようにも思える。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ブルガリア、ユーロ導入で一時的な物価上昇も=ECB

ビジネス

KKR、今年のPE投資家への還元 半分はアジアから

ビジネス

ニデック、信頼回復へ「再生委員会」設置 取引や納品

ビジネス

スイス中銀の政策金利、適切な水準=チュディン理事
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中