最新記事
教育

日本の子どもたちの半数以上は「意見表明権」があることを知らない

2025年1月15日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
教室の教師と生徒

管理教育が生徒に政治的無関心のメンタルを植え付ける maroke/photoAC

<学校内で管理・統制される日本の児童生徒が、自分たちにそのような権利があると思えるはずがない>

次期学習指導要領の改訂に向けた議論が始まっているが、今回初めて、教育を受ける側の児童生徒の意見も聴取されることになっている。

子どもが「年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会」を確保することは、こども施策の基本理念の1つだ(こども基本法第3条)。児童の権利条約第12条も、「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する」と定めている。子どもには、「意見表明権」というものがある。


しかし、日本の13~15歳の生徒に「社会において、こどもが自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえると感じているか」と問うと、肯定の回答割合は43.3%。アメリカの58.8%、ドイツの92.4%、フランスの78.5%、スウェーデンの88.0%と比べるとだいぶ低い。

そもそも、意見表明権があることすらあまり知られていない。<図1>は、「こどもには、自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえる権利があることを知っているか」と尋ねた結果をグラフにしたものだ。

newsweekjp20250115013606-95bee3e5db357fd853d7e09852e317ae0a3f2e8c.png

中学生の年代の回答だが、日本では「自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえる権利」があることを聞いたことすらない、という者が半数以上を占める。他国の生徒と比べて、無知の度合いが大きい。

「君たちには意見表明権がある」と教師が口に出して教えないとか、メディアで報じられる頻度が少ないとか、そういう問題ではないだろう。日本の子どもは、上から管理・統制される。肌着の色まで指定するブラック校則に縛られ、異議を申し立てると「内申書に響く」などと脅される。こういう状況で、自分たちに意見表明権があると思えるはずがない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国経済8月は減速、生産・消費が予想下回る 成長目

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ワールド

米中マドリード協議、2日目へ 貿易・TikTok議

ビジネス

米FTCがグーグルとアマゾン調査、検索広告慣行巡り
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中