最新記事
音楽

なぜイエスもモーツァルトも「ロックを歌う」のか?...大ヒット作品からロックの持つ「意味」に迫る

2025年1月14日(火)16時36分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
エレキギターを演奏する男性

Media_Photos-shutterstock

<「孤独を叫ぶのもロックなら、貴族社会への反抗的態度もロックだ」──歴史ものや伝記作品でロックが果たしている意味とは>

イエス・キリストの最後の7日間を描く《ジーザス・クライスト・スーパースター》に、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生涯を描く《モーツァルト!》──ミュージカル作品でしばしば見られる「音楽と時代のずれ」。

作品が描く時代には存在しなかった音楽をあえて使う手法はどのような効果を生み出すのか?

オペラや音楽劇の研究を行っている長屋晃一氏の著書ミュージカルの解剖学(春秋社)より一部抜粋して紹介する(本記事は第3回)。

※第1回はこちら:ミュージカルは「なぜいきなり歌うのか?」...問いの答えは、意外にもシンプルだった
※第2回はこちら:『レ・ミゼラブル』の楽曲を「歩格」で見てみると...楽譜と歌詞に織り込まれた「キャラクターの心」とは?

◇ ◇ ◇

音楽と時代がずれている、どころかまったく共通しないように思える、そういうジャンルの作品の最初のひとつは《ジーザス・クライスト・スーパースター》(1971)であることはまちがいない。

ロックを用いたミュージカルをロック・ミュージカルと名づけている場合がある。ロックを用いた作品の初期の例に《バイ・バイ・バーディー》(1960)というミュージカルがある。

これは、スターのロック歌手が徴兵されることになり、お別れのキスをする権利をテレビ番組内で募集する、という内容である。しかしながら、これはロックが流行した時代を舞台としている。それに、全編をロックで通すのではなく、あくまでロック歌手のバーディーが歌う「ショー」の機能のなかにとどまっている。

Broadway Center Stage: Bye Bye Birdie | The Kennedy Center


これに対して、全編のテイストとしてロックを用いたのは、《ヘアー》(1967)であったとされている。この作品ではベトナム戦争の反戦メッセージを伝えるために、ヒッピー文化をあらわす音楽としてロックが用いられた。これもやはり同時代の音楽として用いられている。

The Cast of Broadway's "Hair" Performs "Aquarius/Let The Sun Shine In" | Letterman


これにたいして、《ジーザス・クライスト・スーパースター》はまったく異なる。いうまでもなく、ジーザス、すなわちイエス・キリストが生きていたのは2000年前の世界である。

日本
【イベント】国税庁が浅草で「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録1周年記念イベントを開催。インバウンド客も魅了し、試飲体験も盛況!
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中