最新記事
ロシア

真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ

2024年12月31日(火)16時45分
S・C・M・ペイン(米海軍大学校教授)
日露戦争

日露戦争の木版画 UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE-UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY IMAGES

<帝政最後の皇帝ニコライ2世のように、真の敵を見誤り、ウクライナ侵攻を拡大して滅びの道を突き進むロシア。プーチンの側近たちは今こそ決断をすべきだ>

帝政ロシア最後の皇帝となったニコライ2世のように、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は真の敵を見誤っている。本物の脅威が勢いを増すのを放置し、しなくてもいい戦争に没頭している。

ロシアに存亡の危機をもたらすのはウクライナではない。中国だ。

ニコライ2世は真の敵ドイツとの戦いに備えて鉄道と武器に投資すべき時に、収益化できない満州の利権をめぐり日露戦争で日本と戦火を交えた。その後ロシアは第1次大戦に敗北し、ボリシェビキが権力を掌握。皇帝は家族と共に処刑された。殺されずに済んだ貴族は国外に逃れ、多くが貧困のうちに死んだ。

今回、欧米にもウクライナにもロシアに侵攻する意図はなかった。ロシアの領土を欲しがる国が西側のどこにあるだろう?

だが中国は違う。19世紀以来、帝政ロシアに広大な――アメリカの国土に例えるならばミシシッピ川以東よりも広い――領土を奪われた恨みは大きい。

帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世

帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世  HULTON ARCHIVE/GETTY IMAGES

中国がロシアに手を出すのは時間の問題

ウクライナ侵攻は重大な過ちだった。それは戦前の状態に戻すのが不可能な類いの過失で、後には戦前よりはるかに望ましくない状況が待っている。問題はロシアが負けるのか否かではなく、その敗北の規模だ(戦略的には既に負けている)。

ロシア側の死者と負傷者は70万人を超えた。ヨーロッパとの利益の大きいエネルギー貿易を諦め、儲けの小さい市場に切り替えざるを得なくなった。

制裁で生産力は落ち、西側諸国は外貨準備を凍結してその利子をウクライナ支援に向けた。高学歴のIT技術者を含む働き盛りの国民が、大挙して国を逃げ出した。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、金利当面据え置きへ インフレ期待安定=スペ

ビジネス

東エレク、通期純利益見通しを上方修正 市場予想上回

ビジネス

GPIF、10―12月期の運用収益16兆円 国内外

ビジネス

トヨタが社長交代、近CFOが昇格 佐藤氏は3年で副
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中