最新記事
野生動物

ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦略...巨大な獲物を狩る様子を研究チームが撮影

Killer Whales Caught Harvesting Organs From Largest Fish in the Sea

2024年12月8日(日)13時05分
トム・ハワース

今回の発見が提起する海洋生態系の保全に関する疑問

モクテスマと名付けられた雄のシャチが、記録された4回のうち3回の狩りにいた。群れのメンバーまたは身内と思われる雌のシャチも、4回のうち1回の襲撃に参加していた。

海洋保全に取り組む慈善団体ORCAの教育責任者アナ・バニーは本誌の取材に対し、「シャチは、その特殊な狩りの手法で世界的に知られている」と説明する。「このレパートリーに今、世界最大の魚を仕留める印象的なテクニックが加わった」。バニーは今回の研究に参加していない。

研究チームは、背びれなどの特徴を写真で分析し、シャチの個体を識別した。

今回の発見は、海洋生態系のダイナミクスと保全に関する重要な疑問を提起している。イゲラ=リバスは、海洋観光を注意深く管理することが必要だと強調した。「資源開発とは無関係の(海洋における)あらゆる活動が、敬意を持って、持続可能な方法で行われることを保証するような、明確な規制基準が必要だ」と同氏は述べた。

研究チームはまた、モクテスマの群れの特殊な狩猟戦略にも、潜在的な脆弱性があると指摘している。もし気候変動が、カリフォルニア湾に生息するジンベエザメの個体数に影響を及ぼせば、これらのシャチは、独自の補食方法を維持していくうえで大きな困難に直面する可能性がある。

「シャチたちが戦略的かつ知的に協力し、獲物の体の特定部位のみを狙う姿は非常に印象的だ」とイゲラ=リバスは語る。「彼らがどれほど優れた捕食者であるかがよくわかる」

世界自然保護基金(WWF)によれば、ジンベエザメは、補食されなければ150歳まで生きることもある。しかし、そこまで長生きする個体は少なく、成体まで生き延びる割合は10%以下だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

伊藤忠商事、今期2.2%増益見込む 市場予想と同水

ワールド

米予算教書、FBIや麻薬取締局の予算削減と関係筋 

ワールド

トランプ氏、2日に予算教書公表 環境・対外援助など

ワールド

イスラエル、シリア大統領官邸付近を攻撃 少数派保護
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中