最新記事
イスラエル

崩れた信頼の再構築...イスラエル軍が挑むガザ戦争の「真の意味」

THE ‘PEOPLE’S ARMY’ AT WAR

2024年9月10日(火)14時40分
ラファエル・S・コーエン(ランド研究所上級研究員)

36万人の予備兵を直ちに招集

これは伝統的なイスラエル軍の傾向を考えると、異例のことだ。

確かにイスラエルは、近隣地域でなんらかの問題が起こると、軍事的な対応をしたがる傾向がある。それでも長期的な軍事行動よりも、空爆などの短期的で限定的な戦術が好まれてきた。ガザ奪還の必要性など考えたこともなかったと、現役および退役軍人の多くは声をそろえる。当然、そんな不測の事態に備えた作戦は十分練られてこなかった。


それでも、軍事的な対応を好む傾向ゆえに、ハマスの奇襲後、直ちに約36万人の予備兵に招集がかかった。イスラエルの人口の約4%に当たる規模だ。彼らは数日後には前線に送り込まれ、数週間後には一部がガザでの戦闘を担っていた。

予備役部隊は、今回の戦争が始まる前から、組織的な投資不足と即応性の課題に苦しんでいた。23年1月のイスラエル国家安全保障研究所の報告書によると、兵役の義務を果たした後、3年間に少なくとも20日間従軍するという予備役の要件を満たしている人は約6%にすぎない。

軍の構成が予備役に依存していることは、軍事行動に前のめりな傾向をさらに強める。予備役が多いため民間部門の労働力に占める割合も高く(技術部門は労働者の推定10~15%が招集されている)、経済の大きな混乱を避けるためにも、迅速な勝利を求める強い動機付けになる。

20代の士官が10代を指揮する

1年前にイスラエル軍は組織として失態をさらしたが、一方で勇敢な個人のエピソードが数多く生まれた。

襲撃の知らせを聞いたある退役少将は拳銃を手に、息子家族が暮らす南部キブツ(農業共同体)に急ぐ道中で他のイスラエル人を助けながら、10時間後に家族を救出した。女性だけの戦車部隊は詳細な命令を待たずに出動し、数十人規模の武装勢力と交戦してキブツを救った。ほかにも数え切れない英雄たちの活躍は、イスラエル軍の文化の最も称賛すべき側面でもある。

イスラエル軍には、西側諸国の軍隊のような構造上の制約が少ない。軍曹の階級はあるが、主に士官が指揮を執る。徴兵制のため米軍より若い士官が多く、20代の士官が10代後半の徴集兵を指揮することも珍しくない。部隊を視察したアメリカの軍事監視員が、くだけた雰囲気や、基本的な軍事プロトコルを軽視していることに驚くのも無理はないだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EU、エネ価格高騰で一時的措置検討へ 減税など視野

ビジネス

今年の財貿易伸び1.9%に鈍化、WTO予想 イラン

ビジネス

EUのエネルギー高騰対策、一時的かつ的絞るべき=E

ビジネス

中国レアアース磁石輸出、1─2月は前年比8.2%増
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 5
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 6
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 9
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 10
    トランプ暴走の余波で加熱するW杯「ボイコット論」..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中