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荒川河畔の「原住民」①

荒川河川敷ホームレスの「アパート」と「別荘」を、中国人ジャーナリストが訪ねた

2024年9月4日(水)10時25分
文・写真:趙海成

彼がホームレスになったことが、ギャンブル好きであることと関係があるとは断言できないが、その可能性は否定できないだろう。

斉藤さんと雑談していたとき、彼が持つ小さなラジオでは、日本の参議院議員選挙に関するニュースが流れていたことに気づいた。斉藤さんに聞いた、「あなたは総選挙の投票に参加できますか」と。彼は「できない」と言った。なぜなら、彼のようなホームレスには「住民票」(戸籍証明書)がなく、選挙権を失っているも同然だからだ。

道理は簡単で、選挙の前には各自治体が選挙権のある人に「投票所入場整理券」を郵送する。斉藤さんたちは家を持っているが、正規の住所がないので、自治体から荷物が届くことはない。

「なぜ選挙のニュースを聞くのか」という質問に斉藤さんは、「国民として国家の大事に関心を持ち、また時事ニュースをよく聞くことは、頭を働かせるのにも役立つ」と答えた。

「もし投票に行くことができたら、あなたはどの政党の候補者に投票しますか?」と質問すると、ほとんど躊躇せず、こう答えた。「もちろん自民党ですよ!」

私はまた、ある問題に頭を巡らせた。コロナ禍で、日本政府は住民全員に補助金10万円を支給した。外国人である私も受け取ったが、彼らホームレスも受け取ったのだろうか。

斉藤さんによると、このような良いことにも彼らの分はない。なぜなら、投票権の問題と同じく、住所や「住民票」が固定されていないからだという。

斉藤さんと話をしていると、桂さんがタバコを買って帰ってきた。私は、斉藤さんとの会話を終え、桂さんのエビ漁の見学のためついて行った。

アライグマの家族が餌を探しに姿を現す

少し歩いて、川の水辺に着いた。そこには多くの「人工遮水石」(私が勝手につけた名前)が置いてあり、エビ捕りの網はこれらの石の隙間に設置されている。

昨日の夕方に設置された網を引き上げてみると、やはり魚やエビが入っていた。桂さんは小さな魚とエビを川に戻し、少し大きいサイズのものを別の網に入れたのち、その網を水に戻した。理由は、食卓に上がるギリギリまで鮮度を保つためだという。

荒川河川敷のホームレス

左:桂さんはこの籠網でエビを捕る/右:アライグマが餌を求めてきた時の様子を私と斉藤さんに再現する桂さん

水辺では、2匹の蛇が脱皮したあとの枯れた皮も見た。桂さんによると、この近くにはよくアオダイショウが出没する。ある時は、1匹の蛇がテント小屋に潜り込んだが、桂さんはそれを発見し、追い出した。

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