最新記事
食糧

カカオ豆高騰で農家が苦境に...外国人密輸業者が暗躍

2024年7月10日(水)18時53分
カカオ豆農家の労働者

ガーナのカカオ豆農家は、政府機関が公式買い取り価格(農家向け公定価格)を低く抑え、代金の支払いも遅れているため、高く買い取る密輸業者に売却せざるを得なくなっている。写真はカカオ豆農家の労働者。2月に撮影(2024年 ロイター/Francis Kokoroko)

ガーナのカカオ豆農家は、政府機関が公式買い取り価格(農家向け公定価格)を低く抑え、代金の支払いも遅れているため、高く買い取る密輸業者に売却せざるを得なくなっている。農家や当局者がロイターに語った。ガーナは世界第2位の生産国だが一段と状況が厳しくなる恐れがあるという。


 

チョコレートなどの原料となるカカオ豆の国際価格は今年初頭以降、高騰している。世界屈指の産地ガーナとコートジボワールで天候不順や病害による不作や、鉱物の違法採掘の影響で収穫が激減しているためだ。

国際価格は1年前の約2倍の水準で推移しているものの、ガーナ公定価格に反映されておらず、隣国トーゴを拠点とする密輸業者に有利な状況をもたらしているという。

ガーナのカカオ産業を管理する政府機関「ココボード」の東ボルタ・オティ地区責任者は「1月から今日まで、カカオ豆の等級付けが全くできていない。これは痛ましい事態だ」と述べた。

ココボードは先渡し契約でカカオ豆を売却し、その平均価格に基づいて生産者価格を設定する。今シーズンのカカオ豆が売却された時点では国際価格はずっと低い水準だった。このため足元の高い価格水準に合わせて生産者価格を引き上げると、ココボードが損失を甘受しなければならなくなる。

それでもココボードは4月、密輸業者への売却を阻止する狙いもあり、公定価格を約60%引き上げた。

だが現地のバイヤーによると、密輸業者はカカオ豆の品質にはほとんど関係なく公定価格の2倍超の価格提示をいとわないため、密輸業者には太刀打ちできないという。

ココボードの当局者はロイターに、ボルタ・オティ地区で生産されたカカオ豆は1月以降、公式免許を持つバイヤーには全く買い取られていないと話した。生産された全量が密輸業者に売却されたという。

関係者の話では、密輸業者は体制を強化している上、手口も高度化しており、トーゴを拠点とするレバノンや中国、フランス、ロシアなどの国籍の外国人が資金を提供したり組織を運営したりしているケースもある。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米国、ベネズエラへの新たな作戦

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中