最新記事
アメリカ

ロサンゼルスのギャング抗争は、警察側も非道なプロファイリング、銃撃・投獄を行っていた

2024年7月4日(木)18時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

当初は2人以上が集まって、5分以上路上にとどまるといった無害な行為を禁止するものだったが、それでは万人の人権侵害になるという理由で、器物破損や不法侵入、迷惑行為、脅迫、路上排泄、さらにはギャングのシンボルカラーや手ハンドサイン信号の使用など、明らかな反社会的行為を禁止する目的に修正された。

暴行のような重罪の減少など一定の成功は認められるものの、インジャンクションはいまだに議論を呼んでいる。ギャングの縄張りと境界を表す地図がオンライン上で公表され、そこに警察の注目が集中することで、当該地域のイメージが悪化する恐れが出てきた。

事実、地元のコミュニティは以前から、インジャンクションのせいで地域全体――とりわけ黒人とヒスパニックが圧倒的多数を占める地域――が汚名を着せられ、不法逮捕を含む警察の度を超した監視や嫌がらせに苦しめられていると主張している。

人権擁護団体は、警察が都市の大部分にインジャンクションを適用することを阻止し、いまはその地域で暮らしていないか、すでにギャングとは縁を切った多くの人々が、法廷でギャングのメンバーとして扱われることに異議を唱えられるようにするために戦ってきて、ようやく2020年12月に大きな進展があった。

赤ん坊まで含まれていたギャングのデータベース

さらに言えば、20世紀が終わる直前に、ギャング活動の疑いがある人物や、ギャングと接触した可能性のある人物に関する情報を集めるために、〈カルギャング〉という州全体をカバーするデータベースが開発された。

ところがそこには、メンバー間の連絡役など、ギャングに加入している証拠がほとんどないヒスパニックや黒人男性が数多く登録された。2016年に行われた州の監査では、登録時の年齢から見て、赤ん坊までリストに入れられていることが判明した。

このデータベースに登録されると、たとえ軽微な犯罪であっても、重すぎる判決を受ける可能性があった。2020年夏、ロサンゼルス市警は、地域に対する責任を果たし、信頼を高めるために、今後はこのデータベースを参照しないことを選択した。

カリフォルニア州では黒人の男女の収監者数が不釣り合いなほど多く、これは司法制度――広く見れば米国社会全体に浸透した人種差別を反映したものだ。

宗教指導者、親、教育者、ギャングの元メンバー、青少年プログラムが力を合わせる協力戦略が、殺人の減少に効果があるのは正しく評価されているが、残念なことにギャングの犯罪は減少方向に向かわず、一進一退の状態にある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

次回利上げ提案、確たること申し上げられない=田村日

ビジネス

英GDP、8月は前月比+0.1% 予想と一致

ワールド

タイ・カンボジア軍事衝突につながった地雷、最近埋設

ワールド

ロス大規模山火事、放火疑いで逮捕の男を起訴 12人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中