最新記事
ウクライナ戦争

ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイマースが禁断のクラスター弾を使った初の「証拠映像」がXに

Video Shows Kyiv's First Upgraded HIMARS Cluster Strike on Russian Troops

2024年6月25日(火)19時31分
ブレンダン・コール

ハイマースと兵士(2023年3月30日、デンマークのオクスポルで行われた米軍による訓練で)

<クラスター弾を装填し、ますます強力になったハイマースがロシア軍を襲う>

ウクライナ軍が、アメリカから供与されたクラスター弾を使用してロシア軍を攻撃した様子を初めて捉えたとされる動画が拡散している。

【動画】ロシア軍部隊を引き裂くように炸裂...米軍供与のハイマースが禁断のクラスター弾を使った初の証拠映像?

アメリカは、対ウクライナ軍事支援の一環としてHIMARS(ハイマース、高機動ロケット砲システム)を推定20基供与しており、ロシアとの戦闘初期には形勢を逆転するほどの威力を発揮した。とりわけ今回は、M30 クラスター弾 GMLRS (誘導多連装ロケットシステム)を搭載したハイマースがロシア軍に対して初めて使われたとされる。

 

ロシアの大規模侵攻について最新情報を公開しているX(旧ツイッター)アカウント「Ukraine Battle Map」は、6月23日付けで2分間の動画を投稿。クラスター弾がロシア軍に対する攻撃に使用されたことを初めて目で確認できる証拠だと謳っている。本誌はこの動画について確認できていない。

伊ロックバンド「マネスキン」の曲「ジッティ・エ・ブオーニ(「黙っていい子にしてろ」)」が流れるこの動画は、ドローンから撮影したもののようだ。平原でクラスター爆発が起こり、続いて、1人のロシア兵を載せたストレッチャーを同僚たちが1台の車まで運んでいく様子が映っている。

Ukraine Battle Mapは、「この動画で、ウクライナ軍がロシア兵に対し、ハイマースでGMLRSのM30クラスター弾を使ったことが確認できた。この戦争が始まってから初めてのことだ」とコメントした。この攻撃が起きたのは、ザポリージャ州ブルチャークの南で、前線から約20キロほど離れた場所だ。標的になったのは、「ロシア兵7人以上の集団と、おそらくは1台の車両」だと見られる。

6月上旬には使われていた?

この投稿をシェアした米国防総省の元職員トレント・テレンコは、こうコメントしている。「これは、装甲貫通力がより低い代替単弾頭M31A1ではなく、GMLRSのM30クラスター弾が戦場で使われた証拠だ」

Ukraine Battle Mapは6月5日に、米軍が備蓄していた最大1950発のM30クラスター弾が、ロシアのベルゴロドが攻撃された時に使用されたと投稿していた。ベルゴロドはロシア西部の都市で、ウクライナとの国境に近く、頻繁に越境攻撃を受けている。

軍事情報サイトArmy Recognition.comは、3週間前に行われたとされるこの攻撃について、「軍事戦術と能力における顕著な進歩が、同地区で役立った」と述べている。またGMLRSのM30は、長さ約3.94メートル、重さ約307キロで子弾M101が404個装填されていると説明している。子弾が広範囲に散らばり、「現代の戦争、とりわけ長距離の精密爆撃を実行するうえで重大な能力」だと説明している。

一方、ウクライナメディアのAstra Telegramチャンネルによると、ウクライナ軍は6月22日、ハイマースを使用してロシアのクルスク州を攻撃した。ターゲットには、ロシア連邦保安庁国境警備局の建物も含まれていたという。
(翻訳:ガリレオ)


ニューズウィーク日本版 中国EVと未来戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月14日号(10月7日発売)は「中国EVと未来戦争」特集。バッテリーやセンサーなどEV技術で今や世界をリードする中国が戦争でもアメリカに勝つ日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、8月は侵攻以来最大の落ち込み 経

ワールド

英国、公的部門借入額を下方修正 税収データに誤り

ワールド

タイ中銀、政策金利据え置き 米関税で成長減速予想

ビジネス

アサヒGHDへのサイバー攻撃、ランサムウエア集団「
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示す新たなグレーゾーン戦略
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女性を襲った「まさかの事件」に警察官たちも爆笑
  • 4
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 8
    「それって、死体?...」新婚旅行中の男性のビデオに…
  • 9
    ヒゲワシの巣で「貴重なお宝」を次々発見...700年前…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 10
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中