最新記事
イスラエル

イスラエルがラファに投入する主力戦車「メルカバ」は世界屈指の破壊力

Rafah offensive: How Israel will use the world's deadliest tank

2024年5月14日(火)16時56分
ジーザス・メサ

ガザを見下ろす丘に上る「メルカバ」(2024年2月6日、イスラエル南部)  Matrix Images / Jim Hollander

<ガザ南部ラファに本格侵攻するとき、イスラエル軍はありとあらゆる最新鋭兵器を投入するとみられる。なかでも世界屈指の破壊力を誇るとされるのが、主力戦車「メルカバ」だ>

イスラエル軍は、現在準備を進めているとみられるガザ南部ラファへの本格侵攻にあたって、世界屈指の破壊力を持つ主力戦車「メルカバ」をはじめとする最新鋭の火砲や兵器を使用する見通しだ。

イスラエル軍は先週、「ハマスのテロリストを排除するための対テロ作戦」の一環として、メルカバ2両がラファに入る画像をインターネットに投稿した。

【動画】イスラエルの主力戦車「メルカバ」の特殊設計や対戦車ミサイル防護システムを見よ

1970年代にイスラエルで開発されたメルカバ(ヘブライ語で「神の戦車」の意)は、乗員の防護を何より優先する設計になっており、イスラエル軍にとって欠かせない資産へと進化してきた。1982年のレバノン内戦で初めて実戦に投入され、ベッカー高原で旧ソ連軍を撃破した。

軍事専門家や専門誌は一貫してメルカバを「世界で最も高度な機能を持つ装甲車両」の一つと評価しており、イラク戦争など最近の複数の紛争で米軍の主力戦車として活躍している「M1エイブラムス」に匹敵するとしている。

 

イスラエルの防衛・安全保障アナリストであるヤーコブ・ラッピンは、イスラエルの安全保障上の課題を研究するシンクタンク「アルマ研究教育センター」のブログに最近行った投稿の中で、「ガザでの戦争は都市環境における装甲部隊の適応力を示しているだけでなく、ウクライナ戦争で数多くの戦車が破壊されて広まった『戦車は時代遅れ』だという見方を大きく覆している」と述べた。

対戦車誘導ミサイルも撃ち落とす

イスラエル軍は2004年以降、メルカバMk.4を主力戦車としてきた。この第4世代モデルは車体前部にエンジンが搭載され、前方から攻撃を受けた際に(エンジンを防御材の一部として利用することで)乗員を守ることができるようになっており、車体後部が兵員用コンパートメントになっているのが特徴だ。

メルカバは最大8人の兵士を乗せることができ、電動式の砲塔と電磁的脅威を検知できる高度な防護装置も備えている。またメルカバには対戦車誘導ミサイルを迎撃するアクティブ防護システム(APS)「トロフィー」が装備されている。世界でも実戦でその効果が実証されているAPSは「トロフィー」だけだ。

「トロフィー」はイスラエルの軍需企業ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズとイスラエル・エアロスペース(IAI)傘下のエルタ・グループが共同で開発。4本のレーダーアンテナと射撃統制レーダーを備え、対戦車誘導ミサイルやロケット弾のような潜在的脅威を追跡できる。

脅威を検知すると、「トロフィー」が迎撃弾を発射してそれを無力化する。

ラッピンによれば、「トロフィー」を装備することで、イスラエル軍の戦車は人口が密集している都市部の戦闘区域でハマスの防衛線や対戦車待ち伏せを突破することができる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中