最新記事
中国

中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切り下げ」の前触れか

China May Be Preparing to Deploy Economic 'Nuclear Option'

2024年5月2日(木)09時54分
マイカ・マッカートニー

世界最大の輸出国である中国にとっては、通貨切り下げは魅力的かもしれない。国内のデフレと消費需要の不足に直面する中国は、ますます輸出を増やしたいからだ。

だが、この動きがアメリカやその他の主要貿易相手国との緊張を高めることは間違いないだろう。

中国の産業界はすでに、鉄鋼や化学製品など低価格の輸出品を市場にあふれさせていると非難され、各国でダンピング調査が行われようとしている。アメリカとEUはすでに、中国の電気自動車に対する関税を検討している。

 

「中国がドルに対して自国通貨を切り下げる準備をしているとは思わない」と、ラダックトレーディングのマクロアドバイザー、クレイグ・シャピロは本誌に語った。「だが、中国がロシアやイランのような、欧米の制裁対象国から人民元で購入できる商品を買い続けていることは確かだ」

台湾侵攻の準備という可能性も

中国が資源を備蓄する動きの背景には、もっと不吉な、別の理由があるかもしれない。台湾侵攻による国際的孤立に備えている可能性がある。

「中国の習近平国家主席は、西側諸国がウクライナ問題でロシアに対して行った制裁の手口を研究し、中国経済の万一の危機に備えるために長期的な保護措置を開始したようだ」と、元海軍情報局代表のマイケル・スタッドマンはウェブマガジンのウォー・オン・ザ・ロックスに寄稿した。

中国はまた、食料やエネルギーの禁輸という形で制裁を受けた場合、その影響を軽減する方向に動いている。石油の戦略的備蓄を増やし、「石炭火力発電所の建設に新たな情熱を注いている」というのだ。

「台湾を中国に統一しようとすれば、世界的に激しい反発が起き、厳しい影響が中国社会全体に及び、何年も続くことを習は知っているのだろう。そして習は、中国がそれに耐えられるように準備するつもりなのだ」とスタッドマンは主張した。

中国政府は台湾を自国の領土だと主張しているが、中国共産党が台湾を統治したことは一度もない。米政府高官は、習が中国の軍部に、2027年までに台湾を侵略する準備をするよう指示したと考えているが、その脅威がどれほど現実的なものか、米政界では意見が分かれている。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ

ビジネス

完全失業率3月は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中