最新記事
コミック

日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

BEHIND MANGA MANIA

2024年4月26日(金)18時05分
澤田知洋(本誌記者)

個人的には、記号的で人種を感じさせない日本の漫画特有のキャラクターの絵柄の強みもあると思う。歴史をかなり端折ってしまうが、ディズニーの絵柄を取り入れ洗練させたのが手塚治虫だった。そこに少女漫画の「24年組」を含む面々が目を大きく描くなど叙情的要素を加味し、心理描写がしやすくなった。

これが少年漫画のキャラクターの肉感的要素と合わさり、1980年代の「ロリコン」ブームなどを経つつ現在の美少女描写などに典型的に見られるスタイルを生んだ。「へのへのもへじ」的でありつつ万人が感情移入しやすい、ある種便利な絵柄が、海外でもゲームやアニメを通じて日本の作品が慣れ親しまれるようになった大きな要因ではないか。

──将来的に日本の漫画はさらに海外に広がっていく?

日本の漫画市場と比べて、例えば北米市場はまだ小さい。世界的にはスタートラインに立ったばかりのところではないか。気になるのは映像化される大人気作品か、マイナーなものか、というように流通の形が両極端になる傾向にあること。老若男女向けに多くのジャンルや表現がある豊かさが、海外人気の源のはず。それが日本国内市場の縮小もあり、先細りになることを懸念している。

アジアには日本のオタク文化を基に、先ほど述べた「便利」な絵柄の利点も生かして創作するクリエーターが既に多い。アメリカでも童話『不思議の国のアリス』に日本の漫画風イラストを付けたものがヒットしたのは、既に10年前。しかも描き手はフィリピンのイラストレーターで、日本のクリエーターは関わっていない。

海外の作り手とも協働しつつ、さまざまに異なる各地域の市場の需要に対応しつつ進出する「漫画・アニメ界のハリウッド」を日本が目指す必要性を感じている。

※この記事は「世界が愛した日本のアニメ30」特集掲載の記事「北米を席巻する日本マンガ」の拡大版です。詳しくは本誌をご覧ください。

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ビットコイン連日最高値、関連株も高い 米下院は来週

ワールド

EU、ガザ対応巡りイスラエルへの圧力強化検討

ワールド

米国務省、1350人超の職員解雇開始 トランプ氏の

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問開始、その後中国で上海協力機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パトリオット供与継続の深層
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 7
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    英郵便局、富士通「ホライズン」欠陥で起きた大量冤…
  • 10
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中