最新記事
インド

総選挙で勝利確実のモディとインド人民党が「遠くない将来に迎える転機」とは?

2024年4月23日(火)12時40分
マイケル・クーゲルマン(ウッドロー・ウィルソン国際研究センター南アジア研究所長)
西ベンガル州の集会で候補者と共に支持を訴えるモディ(中央、4月16日) ANI PHOTOーREUTERS

西ベンガル州の集会で候補者と共に支持を訴えるモディ(中央、4月16日) ANI PHOTOーREUTERS

<インドの総選挙は4月19日から6月1日まで続き、モディ首相とインド人民党の強固な支持が選挙結果を大きく影響する>

インドの総選挙は4月19日に始まり、6月1日まで6週間続く。この選挙は一見、今年南アジアで行われた他の2つの選挙と似ているように見えるかもしれない。

1月のバングラデシュ、2月のパキスタンと同様、現政権の勝利が予想され、野党指導者の失脚や政府批判派の取り締まり強化を背景に投票が行われる。だがインドの選挙と政治状況は、この地域全体の政治動向とは対照的だ。

主な理由は長期間続くモディ首相と与党・インド人民党(BJP)の高い人気にある。最近の調査によると、モディの支持率は75%。2014年から政権を担ってきた政府の長としては異例の数字だ。

要因はいくつもある。モディの人柄、指導力、実績、イデオロギー、野党の弱さ。総選挙で問われているのは与党が勝つかどうかではない。どこまで勝つかだ。

反モディ派の多くは公平な選挙ではないと主張する。現政権は野党指導者を恣意的に逮捕し、選挙管理委員会への影響力を強め、反対派を選挙で不利な立場に追い込んでいると、彼らは指摘する。

だが、それがなくてもBJPへの支持は圧倒的だ。野党への締め付けがなかったとしても、総選挙の結果はあまり変わらないかもしれない。

BJPは直近の州・地方レベルの選挙で、主要野党のインド国民会議派や地域政党に敗れている。それでも全国レベルで見れば、野党勢力はBJPに到底及ばない。

南アジアでは、モディとBJPほど長く政権を維持してきた例はほとんどない。

ネパールでは08年の王制廃止後、10回以上首相が交代。パキスタンは同年に軍事政権が終わってから、権力基盤の弱い連立政権が続いている。スリランカのウィクラマシンハ大統領は、前任者が反政府デモを受けて辞任した後、22年に就任したばかりだ。

09年から政権の座にあるバングラデシュのハシナ首相だけが、南アジアではモディ政権より長い。ただし、この国の選挙は国際的な選挙監視団から自由でも公正でもないとの評価を受けている。

モディ人気と、首相に対抗し得るカリスマ的指導者を出せない野党の現状を考えれば、モディが首相の座にある限り、政治的脅威に直面する可能性はほとんどなさそうだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政権、インテルへの出資は「経営安定が目的」 株式

ワールド

プーチン氏が「取引望まない可能性も」とトランプ氏、

ビジネス

米一戸建て住宅着工、7月は2.8%増 集合住宅も堅

ワールド

米財務長官「インドは暴利得る」と非難、ロシア産石油
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル」を建設中の国は?
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中