最新記事
考古学

「保存状態の良い」ローマ時代の木造地下室、ドイツ西部で発見...フランクフルト市が写真を多数公開

'Extraordinary' Wooden Structure Found From Roman House Destroyed by Fire

2024年3月9日(土)14時30分
アリストス・ジョージャウ(科学担当)
Thomas Flugen/© Archäologisches Museum Frankfurt

Thomas Flugen/© Archäologisches Museum Frankfurt

<階上の住宅はこの火災で全焼。地下へ降りる階段には焼け跡があったという>

「素晴らしく保存状態の良い」ローマ時代の木造地下室が、ドイツ西部のフランクフルトで発見された。

【画像】「保存状態の良い」ローマ時代の木造地下室、ドイツ西部で発見...フランクフルト市が写真を多数公開

古代の木造構造物は2023年、フランクフルト市のヘッデルンハイム地区で行われた発掘作業で出土した。市の発表によると、この遺構の復元が完了し、フランクフルト考古学博物館で修復の専門家によって保全されている。

木造地下室は、古代都市ニダの2本の大通り(プラエトリア街道)の南端に1世紀後半に建てられたと思われるローマ時代の住居の一部だった。

地下室とつながっていた半木造住宅は残っていない。しかしこの発見や、木造地下室の良好な保存状態は「科学的には非常に興味深い」といい、ニダの生活をうかがい知る「ほぼ唯一の」機会を与えてくれると市は解説する。

「これほど素晴らしい発見には特別な配慮を要する。悪天候で危険が差し迫っていたことから、急遽この地下室を古代フランクフルトの重要な工芸品とともに保全することにした」(フランクフルト市のイナ・ハルトヴィヒ文化担当局長)

「素晴らしい技術と試験的な手法を使ってそれが達成できたことをうれしく思う。今後数週間かけて地下室をさらに詳しく調べ、適切な展示方法を決定する」(同)

木造の地下室には火災の痕跡があり、階上の住宅はこの火災で全焼したらしい。地下へ降りる階段には焼け跡があった。現場からは木炭や燃えかす、炭化した梁も見つかっている。

熱で溶けたガラス容器など、火災の跡が残る工芸品もあった。地下の階段には鉄器が落ちたままになっており、住人が地下室の貯蔵品を全て持ち出す時間がなかったことを物語る。

火災からしばらくすると、住宅の跡地の上に別の建物が建てられたが、地下室は使っていない様子だった。

この住宅が建てられた年代と、火災で焼失した年代を正確に特定するためにはさらなる調査を必要とする。

火災の痕跡が残る古代都市ニダの木造地下室が発見されたのは、今回が初めてではない。

ニダの発掘ではこの100年の間に同じような遺構が出土していた。しかし大抵は保存状態がそれほど良好ではなく、現代の発掘手法を使った念入りな調査は行われていなかった。

「従って、2023年に発掘された地下室は多くの点で特別だった」とフランクフルト市は説明している。

(翻訳:鈴木聖子)

ニューズウィーク日本版 トランプ関税15%の衝撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月5日号(7月29日発売)は「トランプ関税15%の衝撃」特集。例外的に低い税率は同盟国・日本への配慮か、ディールの罠

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2

ビジネス

パウエル氏利下げ拒否なら理事会が主導権を、トランプ

ビジネス

訂正-ダイムラー・トラック、米関税で数億ユーロの損

ビジネス

トランプ政権、肥満治療薬を試験的に公的医療保険の対
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中