最新記事
ウクライナ戦争

もう取り返しがつかない?ロシアがウクライナ侵攻で犯した5つの失策

Russia's Top 5 Blunders in Two Years of Ukraine War

2024年2月27日(火)17時39分
デービッド・ブレナン

ロシア南部ロストフナドヌーの司令部を離れるワグネル創設者のプリゴジン(2023年6月24日)REUTERS/Alexander

<開戦から2年、ロシアはアウディーイウカを掌握したが、本当にウクライナは戦争に負けているのか? 最初から失策だらけのロシアはもう勝てる見込みはないと言う専門家もいる>

ロシアによる本格的なウクライナ侵攻の3年目は、約1500キロに及ぶ前線の膠着で始まった。ロシア軍とウクライナ軍は交互に、要塞化された防衛ラインの突破を試みているが、成功は限定的なものに留まっている。

ロシアにとって、戦場の状況は国のシステム不全の証しだ。

ロシアの軍事アナリストでフレッチャー法律外交大学院客員研究員パベル・ルジンは、ロシア政府の作戦には最初から致命的な欠陥があった、と本誌に語った。「最大の過ちは、この戦争を始めたことだ」

「ロシアがこの戦争に勝つことはありえない」と、彼は続けた。「チャンスはない。修正もできない。ロシアの戦略、ロシアのイデオロギー、意思決定プロセス、教育システムなど、すべてが間違っている」

この2年間のロシアにとっての戦争遂行は、より犠牲が大きく、より野蛮なものになり、同時に当初ほどの野心はなくなった。ロシア政府の破壊のドクトリンは依然として前線地域を荒廃させているが、2022年春に首都キーウ攻略に失敗したことで、完全勝利という目標は失われた。

ロシアの戦争は大惨事

「ゆっくりと成果は上がっているが、それは信じられないような代償を払ってのことだ」──イラクとアフガニスタン戦争で連合軍を率いたデービッド・ペトレイアス元CIA長官は、先日のミュンヘン安全保障会議の傍らで行われたヴィクトル・ピンチュク財団主催のイベントで本誌に語った。

「ロシア軍はいずれにせよ勝つことができなかった」と、ルジンは言う。「2022年2月以来のロシアの戦略は大惨事に陥っている」

■1)キーウ電撃作戦の大失敗

ロシアによるウクライナの首都キーウへの「雷撃作戦」は、キーウ郊外のホストメル空港を占拠し、進攻の足がかりにしようとしていた。空港をめぐる戦いはこの戦争で最も重大な意味をもっていたが、結果的には失敗に終わった。

ベラルーシからキーウに向かう長さ約65キロの輸送車の車列は、ロシア軍によるキーウ占領を支える支柱だったが、物流の負担が大きすぎた。蛇行する隊列はウクライナの攻撃によって徐々に侵食され、ロシアの戦術的傲慢さの象徴となった。

AP通信は、キーウ占領の失敗を「歴史的な敗北」と呼んだ。首都キーウ周辺に配備されたロシア軍は、ベラルーシから陸路と空路でやってきた。主力部隊はブチャやイルピンといった郊外に陣取り、市民を残虐に扱った。偵察チームや破壊工作チームもキーウに侵入した。しかし、補給がなければ、キーウを占領することは不可能だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ミネソタ銃撃事件で知事への電話拒否 「

ワールド

トランプ氏、イランの核兵器完全放棄望む 特使派遣の

ビジネス

金価格、年内に3000ドル割れも 需要低迷と成長見

ビジネス

韓国、対米通商交渉を加速へ 米韓首脳会談は中止
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 7
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中