最新記事

「ウクライナ侵攻がなくても上がっていた?」食料価格が世界で高騰する3つの理由

2024年2月19日(月)11時30分
※JICAトピックスより転載

jica_food6.jpg

買い負けについて話をする松井洋治課長。約7年間の投資銀行での経験を経て、2012年JICA入構。中東欧州部、農水省国際部出向、ザンビア事務所勤務を経て現在は経済開発部農業・農村開発第2グループ課長。アフリカ地域(東部・西部英語圏地域を除く)と中東、欧州の農業開発・食と栄養の案件を統括

途上国の自主給食と日本のこども食堂、通じ合う活動

世良 大学でアフリカ研究会に所属して学んでいますが、アフリカに限らず、途上国は温暖化の影響を受けやすいのですか。

松井 もともと所得が低い世帯は食への支出割合が高いため、食料価格の影響を受けやすくなります。政府も財政支援が難しいので、JICAではさまざまなアプローチをしています。例えば、2008年に「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」という国際的なイニシアチブを創設しています。これは、アフリカ大陸全体の米の生産を10年で倍増させようという取り組みで、実際に倍増させることができました。現在はさらに倍増させるフェーズ2の段階です。また、野菜を栽培するときも、地域の市場を農家が自分で見て、利益の大きい作物に気づいてもらってから栽培研修をする市場志向型農業のアプロ―チ(SHEP)もしています。

一方で、ただ食料を作ったり、経済的に自立する家庭を増やしたりするだけでなく、SDGsの観点では食事においても「誰一人取り残さない」ことが大事です。これは三島さんの活動と通じるものがあります。

三島 具体的にどんな取り組みですか。

松井 「自主給食」です。アフリカでは学校給食は、財政的な理由からほとんど提供できていません。そこで保護者や地域住民が自主的に給食を用意し、空腹による集中力の欠如や健康状態を改善しようとするのが「自主給食」です。

jica_food7.jpg

アフリカでの自主給食の様子

三島 みんなでごはんを食べるのは、こども食堂と一緒ですね。

松井 こども食堂は地域の方々が動いて成立させるもの。自主給食は保護者たちが自ら動いて成立させるもの。「自分で動く」ことが、アフリカの農業開発において重要です。政府の支援が限られ、燃料代もないので政府の支援員が農家に行けない。そこで大事なのは自分から動くことで、地域の人たちの自発的な活動をどのように促すのか、これが国際協力の永遠のテーマだと考えています。なぜ、こども食堂では周囲の方々が自ら動いて運営できるのか教えてください。

三島 こども食堂は全国9000カ所以上に広がっています。多くはボランティア活動ですが、高齢化が進み、地域が寂しくなる中での「自主的な支え合いの活動」でもあります。支え合いの活動としてさらに全国に広がればと思っています。

松井 支え合いを生み出すきっかけは何でしょうか。

三島 一つは、「こども食堂」というネーミングが人々の共感を呼ぶのだと思います。みんなにとって大事な「こども」と「食」というパワーワードが重なっているのが大きいですね。さらに日本は災害が多い国で、日常と非日常が背中合わせです。暮らしの安全を保つためにも、日頃から人とのつながりを大事にしたい気持ちが根底にあるからこそ、「何か行動を起こそう」となるのだと思います。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

エプスタイン文書追加公開、ラトニック・ウォーシュ両

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=

ビジネス

アングル:中国「二線都市」が高級ブランドの最前線に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 4
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 7
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 10
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中