最新記事
注目ニュースを動画で解説

人材流出、資本流出、技術・ノウハウ喪失...「経済戦争」はプーチンの負け【アニメで解説】

2024年1月19日(金)19時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ロシア経済

Newsweek Japan-YouTube

<外国企業の撤退や経済制裁がロシア経済に与えている影響について解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>

戦況は膠着状態、政治の機能不全で欧米の支援は揺らぎ、世界の注目は中東で新たに勃発した戦争のほうにシフト。ウクライナの苦戦ばかりが伝えられているが、本当のところロシアはどうなっているのか──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「人材流出、資本流出、技術・ノウハウ喪失...「経済戦争」はプーチンの負け【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

ウクライナは今、2022年2月のロシア軍の侵攻以来、おそらく最も厳しい状況に直面している。昨年12月には、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のコラムニストが「今年の勝者」の1人にロシアのウラジーミル・プーチン大統領を選出した。

それでもプーチンが万事順調かと言えばそんなことはない。あらゆる証拠が示すように、実際には企業の「ロシア脱出」は数々の損失をもたらしている。

エール大学経営大学院教授のジェフリー・ソネンフェルドと、同大学チーフエグゼクティブ・リーダーシップ研究所研究責任者のスティーブン・ティエンらが信頼性を確認した経済データからそのことを検証していこう。

ウクライナ苦境

ウクライナ侵攻直後の数カ月間、推計50万人がロシアを離れた。侵攻開始から2年近くたつ今、離脱者は少なくとも100万人に膨れ上がっている。この大量流出で、ロシアは技術系労働力の1割を失った。ロシアを去って行った多くは、高学歴の熟練労働者だった。

ロシア人材流出

ロシア中央銀行の報告書にあるように、2022年2月から23年6月までにロシアから引き揚げられた民間資本は計2530億ドル。それ以前の資本流出額の4倍以上に上る。

ロシア資産流出

テクノロジーや資源探査など幅広い基幹産業でもこの現象が見られる。石油大手の米エクソンモービルや英BPの撤退で、ロシア側は資源探査に不可欠な技術を失っている。

ロスネフチの公開資料によれば、同社だけでも昨年末までの1年間の設備投資は100億ドル近く増大。同社の北極圏の油田開発計画は欧米の技術や専門知識に頼り切っていたため、その継続が危ぶまれている。

ロシア技術ノウハウ喪失g

ほかにも外国直接投資(FDI)の停止やルーブルの通過交換性の喪失、欧米の資本市場へのアクセスの喪失などの影響も深刻だ。ロシアのベンチャー企業は資金調達の選択肢を奪われ、国際的投資家に出資を求めることも不可能となった。

ルーブル交換性喪失

グローバル多国籍企業の大量撤退が一因となり、ロシアでは、あらゆる分野で資産評価が急激に落ち込んでいる。国有企業の企業価値はウクライナ戦争以前と比べて75%低下した。

ロシア産原油に価格上限を設定する米財務省の措置など、効果的な経済制裁がロシア経済に与えている打撃も考慮すべきだろう。

極度に楽観視するのは過ちだが、外国企業の「大脱出」でプーチンの戦争マシンには明らかに支障が出ている。

プーチン戦争マシン支障

■より詳しい内容については動画をご覧ください。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シカゴ・ロス・ポートランドから州兵撤退

ビジネス

米国株式市場=続落、25年は主要3指数2桁上昇 3

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中