最新記事
ウクライナ情勢

「ロシアに領土割譲で戦争終結を」と、ウクライナに提言

German Lawmaker Tells Ukraine to Give Russia Territory

2023年12月28日(木)16時27分
アイラ・スリスコ
ゼレンスキー大統領とショルツ首相

ゼレンスキー(左)とドイツのショルツ首相(9月20日、ニューヨーク)。ショルツ政権は11月、ウクライナへの軍事支援の予算案を倍増を決めた

<領土の全面奪還に固執するウクライナに、この戦争には勝つ道はないことを前提に、東部4州もロシア支配下のまま国境を凍結し、「戦争を最終的に解決するときだ」と、ドイツの著名政治家が訴える>

ドイツの著名な政治家がウクライナに対し、ロシアとの戦争を終結させるために「一時的な」領土の喪失を受け入れるよう求めている。

ミヒャエル・クレッチマー・ザクセン州首相は12月20日、独誌『シュピーゲル』に対し、停戦と引き換えに東部4州などを占領された現在の国境をそのまま凍結することを検討するようウクライナ政府に提案し、23カ月に及ぶ戦争を「最終的に解決する時が来た」と訴えた。


「停戦の場合、ウクライナはまず、特定の領土に一時的に手が届かなくなることを受け入れなければならないかもしれない」と、クレッチマーは言う。「ウクライナの領土がロシア領になることはない。しかし、他の主要な紛争と同様、最終的な解決策を講じる時が来た」

クレッチマーはまた、対ロシア政策に関してドイツ政府に「Uターン」を促し、ロシアはドイツにとって「危険で予測不可能な隣人」であり、ドイツが立場を弱めれば「さらなる紛争の基礎を築くことになる」と警告した。

「侵略はウクライナで止まらない」

「残念ながらドイツ政府の基本姿勢は、交渉はしない、ただ武器を配れ、というものだ」とクレッチマーは述べた上で、アメリカの議員たちは状況をもっとよく理解し、「この方法では戦争に勝てない」ことを理解していると示唆した。

これに対しウクライナ外務省のオレフ・ニコレンコ報道官は、12月27日のフェイスブックでクレッチマーの発言を非難し、領土で譲歩すればロシアからの「さらなる侵略を招くだけだ」と主張した。

「ウクライナが一時的にでも領土を失うことになれば、ロシア軍はドイツ、特に東の端のザクセン州に近づくだろう」と、ニコレンコは言う。「領土の割譲は必然的にロシアのさらなる侵略につながり、それは間違いなくウクライナの国境を越えていく。ヨーロッパの平和はロシアの敗北にかかっている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年、ウクライナのドネツク、ヘルソン、ルハンスク、ザポリージャの4州を併合すると発表した。国際的には認められていないが、戦争が続く中、これらの州はすべてロシアの支配下にある。

またニューヨーク・タイムズ紙は12月23日、プーチンは停戦のための「取引をする用意がある」と報じた。プーチンは外交的な裏ルートを通じて、国境を現在の位置のまま凍結する条件で戦争を終結させる意向を示しているとされる。

ウクライナは、自国の領土を少しもロシアに渡す気はないと明言している。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2014年にロシアが不法に併合したクリミア半島も含めてすべてを奪還するまで戦争は終わらないと繰り返し宣言している。

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾が国防費400億ドル増額へ、33年までに 防衛

ビジネス

インフレ基調指標、10月の刈り込み平均値は前年比2

ワールド

米民主党上院議員、核実験を再開しないようトランプ氏

ビジネス

ノボノルディスクの次世代肥満症薬、中間試験で良好な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中