最新記事
2024米大統領選

「ルールなき世界」への転落を目前に、老人同士が座を争う「最後の機会」を見届ける...私たちは民主主義を救えるか?

ISSUES 2024: MAKING OR BREAKING DEMOCRACY

2023年12月28日(木)11時50分
マイケル・イグナティエフ(歴史家)
デモクラシー 民主主義

ILLUSTRATION FROM PROJECT SYNDICATE YEAR AHEAD 2024 MAGAZINE

<2024年米大統領選は、あまりにも長く権力にしがみつき、後継者を育てる役割を怠った世代の最後の争い。歴史を変えるには、我々の選択に結局は懸かっている。本誌「ISSUES 2024」特集より>

新しい年が来る。私たちはもう、いつ何が起きても驚かないが、この日付だけは覚えておき、心の準備をしておこう。11月5日、アメリカ大統領選の投票日だ。

その結果次第で、その日に至るプロセスの評価も、その後に続く日々の針路も変わる。

現職大統領のジョー・バイデンは、その経験と見識によって職業政治家の価値を再認識させたが、どうやらあと4年、80代半ばまでの続投に意欲を燃やしているようだ。

それが賢い選択なのかどうかは、彼と同世代の人々の間でも意見が分かれている。対抗馬は前大統領のドナルド・トランプになりそうだが、こちらも年齢はバイデンより3つほど若いだけ。

数え切れないほどの重罪で起訴されており、法的に確定した前回大統領選の結果を受け入れてもいないが、それでも共和党内の支持基盤は(少なくとも今のところ)盤石だ。

何とも退屈な選択肢だが、今度の選挙は史上まれにみる重要な意味を持つ。どちらが勝つか分からないし、敗者が素直に敗北を認める保証もない。そうなれば、アメリカは憲政の危機を迎える。世界各地の指導者の運命も、この選挙の結果次第だ。

もう2年近く国民の血を流し続けているウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、バイデンの勝利を切に祈っている。対するロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、同じくらい熱烈にトランプの勝利を願っている。

共和党がホワイトハウスに復帰すれば、プーチンがウクライナで勝てる可能性は高まるからだ。いずれにせよ、次の米大統領を待ち受ける世界では、クリミア半島やガザ地区だけでなく、あちこちで戦争の火の手が上がっていることだろう。

かつてささやかれた「アメリカの凋落」は、まだ始まっていない。アメリカは今も超大国で、突出した防衛力を誇り、広範な軍事同盟を率いている。台頭する中国をにらみ、冷え切っていた日韓両国の関係も修復させた。先端技術の流出を防ぐための中国包囲網も構築した。

それでも、同盟諸国にはアメリカを信用し切れない理由がある。覇権国家でありながら、腰砕けになることがあるからだ。

シリア内戦では、政権側による化学兵器の使用を阻止できなかった。アフガニスタンでは、あっさりとタリバンに政権を明け渡した。

中東でもアメリカの思いどおりにはいっていない。イスラエルとサウジアラビアの歴史的な和解と関係正常化を目指す交渉も、ハマスの奇襲で頓挫してしまった。

食と健康
「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社食サービス、利用拡大を支えるのは「シニア世代の活躍」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独総合PMI、9月速報は1年4カ月ぶり高水準 サー

ワールド

インド総合PMI、9月は61.9に低下 予想も下回

ビジネス

アングル:Z世代が変える高級ブランド市場、グッチな

ワールド

日米韓外相が会談、台湾・南シナ海情勢に懸念表明 北
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがたどり着ける「究極の筋トレ」とは?
  • 3
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世…
  • 8
    米専門職向け「H-1B」ビザ「手数料1500万円」の新大…
  • 9
    「汚い」「失礼すぎる」飛行機で昼寝から目覚めた女…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「コメの消費量」が多い国は…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 4
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中