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ハマス指導者ハニヤ氏がエジプト入り 新たな戦闘休止めぐる交渉に「外交介入」か

2023年12月21日(木)09時38分
ロイター
イスラム組織ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏

イスラム組織ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏はエジプトを訪問した。イスラエルとの新たな戦闘休止に向けた集中的な交渉が行われる中、「異例の外交介入」とみられる。2021年6月、ベイルートで撮影(2023年 ロイター/Aziz Taher/File Photo)

米政府は、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘の再休止とハマスによる人質の追加解放に向け「非常に真剣な」交渉が行われていると指摘した。ただ、ハマスは恒久的な停戦に関する協議のみ応じるとしており、交渉の行方に不透明感が残る。

ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏は20日、エジプトを訪問した。新たな戦闘休止の仲介を目指すエジプトの当局者と協議する。

交渉に詳しい関係筋によると、新たな戦闘休止でハマスから解放される人質や、イスラエル側が見返りとして刑務所から釈放するパレスチナ人について集中的な協議が進められている。イスラエルは女性や疾病を抱える男性の解放を求めているという。

ガザの武装組織「イスラム聖戦」の指導者も数日中にエジプトに訪れ、戦闘休止の可能性を巡り協議する見通しという。

米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は20日、大統領専用機で記者団に「非常に真剣な協議や交渉」が行われていると述べた。

一方、ハニヤ氏の顧問、タヘル・アル・ノノ氏はロイターに、イスラエルがガザでの軍事作戦を停止し、パレスチナの民間人により多くの支援物資が届けられるまでは、イスラエル人の人質の追加解放を協議する用意はないと表明。

「この2点が実現すれば捕虜の問題について交渉できる。イスラエルが侵攻を続ける限り交渉について話すことはできない」と強調した。

ハマスは新たな戦闘休止を拒否し、恒久的な停戦のみを協議するとしている。ノノ氏は「われわれはエジプトの同胞と侵攻に関するわれわれの立場や最優先事項として侵攻を止める必要性について話した」と述べた。

バイデン米大統領は20日、ガザで拘束されている人質の解放に向け、イスラエルとハマスが近く合意に達するとは想定していないとしつつも、「われわれは働きかけている」と述べた。

ハニヤ氏が公の場で外交に臨むのは、交渉で大きな進展が見込まれる場合のみとされている。最後にエジプト入りしたのは、11月終盤に実現したイスラエル軍とハマスの戦闘休止に関する合意が発表される前だった。

イスラエルはエジプトで行われている交渉についてコメントしていない。恒常的な停戦は否定しており、人道目的の一時的な戦闘休止には応じる考えを示している。

イスラエルのネタニヤフ首相は20日、ハマス掃討と人質全員の解放を果たし、ガザがイスラエルにとって脅威でなくなれば戦争は終結すると改めて語った。

[ロイター]


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