最新記事
テクノロジー

CEOを解任されたアルトマンの速攻ヘッドハントでマイクロソフトの株価が史上最高値

Microsoft Stock Soars After Sam Altman OpenAI Firing

2023年11月21日(火)17時53分
アレクサンダー・ファビノ
サム・アルトマン

AI規制の必要性について米議会で証言するアルトマン(5月16日、ワシントン) REUTERS/Elizabeth Frantz

<対話型生成AI「チャットGPT」を開発したオープンAI社でまさかのクーデター。ウォール街は、失職したアルトマンを雇うと表明したマイクロソフトが正しいと思っているようだ>

マイクロソフトの株価が史上最高値を記録した。これは、同社が株式を持つAI(人工知能)開発企業、オープンAIを解任されたサム・アルトマンCEO(最高経営責任者を、マイクロソフトが雇うと発表したことによるものだ。

<動画>アルトマンと慶應大生の対話


オープンAIの取締役会が11月17日、アルトマンの解任を決議したことで、この週末は社内外が大混乱に陥った。アルトマンは従業員や投資家からの支持を得ていたが、取締役会は解任の方針を変えなかった。

アルトマンが開発したオープンAIの対話型生成AI「チャットGPT」が登場してわずか1年で起きた解任劇の背景には、今後のAIの開発方針についての社内の対立があった。

従業員はアルトマンの解任に反発し、約770人の社員のうち約650人が取締役の辞任と、アルトマンと共同創業者のグレッグ・ブロックマンの復職を要求する書簡を提出する事態を招いた。

テクノロジー分野を専門とするジャーナリスト、カーラ・スウィッシャーが公開したこの書簡は、取締役会はオープンAIのミッションを危機にさらし、同社の事業を弱体化させると非難する内容だった。

ナデラの二正面作戦

オープンAIでのクーデター発生を受けて、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは19日、電光石火の速さでアルトマンとブロックマンを同社の新たなAI研究部門のトップとして迎え入れると表明した。マイクロソフトの株価が急上昇したのは、ウォール街がナデラの決断を「買い」と判断したしるしだ。

テック業界を担当するベテラン・アナリスト、ダン・アイブスは、今回のクーデターをマイクロソフトの戦略的好機と捉え、マイクロソフトの目標株価を425ドルに引き上げた。「アルトマンとブロックマンを引き入れたことで、AI分野でマイクロソフトはさらに優位に立ったとみられる」からだ。

グーグル・ファイナンスのデータによると、マイクロソフトの株価は11月20日、前日比で2.05%高となる377.44ドルの終値をつけた。

新部門が成功を収めた場合、マイクロソフトはオープンAIの49%の株式を持ち続けながら、他方ではアルトマンがAI分野で新たに築くグーグルやアマゾンに対抗する新事業をも傘下にもつことになる。

アイブスによれば、今回の決断によりマイクロソフトは、オープンAIの先進的な対話型生成AIモデルへのアクセスを確保しつつ、アルトマンが率いる新部門で新たな技術開発を進めることができるという。

(翻訳:ガリレオ)


ニューズウィーク日本版 AIの6原則
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

トランプ氏、ウクライナ兵器提供表明 50日以内の和

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中