最新記事
中東

イスラエルのガザ侵攻に準備万端のハマス 地上戦は長期化の恐れも

2023年10月13日(金)17時10分
ロイター
ガザ地区とイスラエルの境界線付近を通行するイスラエル軍の戦車

イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに地上侵攻すれば、待ち受けるイスラム組織ハマスは手ごわい相手になる。写真はガザ地区とイスラエルの境界線付近で、イスラエル側を通行するイスラエル軍の戦車(2023年 ロイター/Ronen Zvulun)

イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに地上侵攻すれば、待ち受けるイスラム組織ハマスは手ごわい相手になる。イランの支援を受け、ロケット攻撃などを行う戦闘員が素早く退避するための広大な地下トンネル網をハマスは構築。過去の地上戦でもイスラエル側にそれなりの犠牲を強いてきた経緯があるからだ。

イスラエルはガザとの境界付近に戦車を集結させ、閣僚らは地上侵攻について開始するかどうかではなく、開始時期の問題になっていると示唆する。イスラエルの安全保障関係者や専門家によると、軍幹部は2008年と14年のハマスとの地上戦から得た教訓に目を向けそうだ。

だが、ハマスは当時よりも勢力が増し、その結果として今月7日にイスラエル側に強襲攻撃を仕掛けられたと言える。

こうした中で地上戦が始まった場合、どういう展開になるかはイスラエル、ハマス双方とも正確には読み切れない。

イスラエルはこれまでにない規模の作戦を展開し、ハマスを「地上から一掃する」と断言。ハマスも過去の戦いで生き残る力と奇襲能力を証明しており、今回も強力な武器を駆使し、人口密集地域を拠点に反撃してくるだろう。

ガザで活動するあるパレスチナ武装組織幹部は「地上侵攻は、占領者(イスラエル)とその軍隊が未知の領域に飛び込むのに等しい」とロイターに語った。

イスラエル当局も、地上作戦が迅速に進むとも、簡単に行くとも考えていないとの姿勢を明確に打ち出している。

特に今回は、ハマスが7日の攻撃で多数のイスラエル人を人質にして、イスラエル軍が「ガザ地下鉄」と呼ぶ地下トンネル網に拘置している恐れがあり、軍部隊がこのトンネル網を制圧しない限り、ハマスの壊滅は難しい。

イスラエルの安全保障関係者の1人は、ロイターに「作戦目的はハマスの軍事能力と装備一式を破壊することにあり、長い時間が必要になる」と説明。標的の大半は地下にあり、まずは地上の敵を一掃しないと地下壕にたどり着けないと付け加えた。

ガザの人口は230万人に達するため、地上作戦は民間人の死者が増大するリスクがあり、これもイスラエル側の軍事計画に困難をもたらしている。

テクノロジー
「誰もが虜になる」爽快体験...次世代エアモビリティが起こす「空の移動革命」の無限の可能性
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

関税の即刻見直しかなわないなら、合意は困難=日米交

ワールド

トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措置示

ワールド

中国、ブラジル産鶏肉の輸入全面禁止 鳥インフル発生

ビジネス

マクロ系ヘッジファンドへの関心高まる、市場の変動に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中