最新記事
中国経済

中国経済の「低迷」は終わりが見えず...それでも、習近平体制は「ビクともしない」と言えるワケ

NOT ABOUT TO GO AWAY

2023年10月11日(水)18時47分
周景顥(ホバート・アンド・ウィリアム・スミス・カレッジ准教授)

ナショナリズムの高まりを利用

純粋に経済だけを見ても体制崩壊が間近だとの見方は大げさだ。どこの国でも経済はおおむね典型的な発展パターンをたどる。高度成長、好況、そして景気後退。ポスト毛沢東時代では、中国経済は80年代前半に急成長し、2011年に減速し始めた。米政府の制裁と世界的に広がりつつある対中デカップリング(切り離し)により、さらに失速するとみられるが、こうした逆風が飛躍のバネとなり、新たな発展サイクルに入る可能性も否めない。

中国経済は「社会主義型の市場経済」であり、党と国家の強力な統制下に置かれている。共産党は国家のあらゆる資源を経済の発展に投入できるし、経済・金融システムの崩壊を防ぐためにも総動員できる。

しかも中国の人々が体制転覆を望んでいるような気配はほとんどない。トランプ政権が中国に貿易戦争を仕掛けて以来、中国では文化・政治的ナショナリズムが高まっている。共産党は経済の失速を西側のせいにし、国民のナショナリズム感情をあおって体制を維持できる。

共産党は国内で依然として強い権力と影響力を持っている。党員は9800万人を超え、中国共産主義青年団(共青団)は7300万人に上る。改革が必要になっても、現在の政治体制の中で共産党が改革を行うことは十分にあり得る。

歴史的に見ても共産党には自己刷新をする力があり、それこそが彼らが21世紀まで生き延びてきた理由でもある。インターネット、スマートフォン、AI(人工知能)など新しいテクノロジーは、民主主義を発展させるとともに、共産党が社会を安定させる力を高めるだろう。必要となれば、他国がそうしてきたように、民衆の大規模な集まりを防ぐためにインターネットを遮断することもできる。

こうした現実にもかかわらず、アメリカは共産党への幻想を捨てていない。毛沢東の死後、アメリカは鄧小平、江沢民、胡錦濤に大きな期待を寄せた。しかし、どの指導者も真の政治改革に全く関心を示さず、こうした期待は裏切られた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ

ビジネス

午前の日経平均は続落、米雇用統計前の警戒ムード 一

ビジネス

経済同友会の代表幹事に山口・日本IBM社長、新浪氏

ワールド

台湾総統、財政関連法改正に反対 野党主導の議会と溝
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中