最新記事
クリミア 

クリミアを守るためにはプーチンが手段を選ばない理由

Why Putin Will Do 'Everything Possible' to Keep Crimea

2023年9月11日(月)17時17分
デービッド・ブレナン

ウクライナの攻撃で一部損壊したクリミア大橋(7月17日) REUTERS/Alexey Pavlishak

<プーチンはクリミア半島を支配し続けるためには核攻撃も含めて何でもやるだろうと、ウクライナ国防省の高官は警告した。なぜそこまで拘るのか>

【映像】クリミアとロシア結ぶ橋で爆発、3人死亡 供給路に打撃

ウクライナ国防情報局(GUR)のバディム・スキビツキー副局長は9日、ウクライナの首都キーウで開かれたヤルタ欧州戦略サミットで、クリミア半島はロシアの地域的な勢力拡大のカギを握っていると語った。一方、ウクライナにとってもクリミア半島の奪還は決して譲れない、と。

ロシアは現在、占領したドンバス地方東部とウクライナ南部、クリミア半島をロシアからの「陸の回廊」として、物資や兵員を運び込み、ウクライナ国内に42万3000人の軍隊を展開しているとスキビツキーは言う。

ウクライナ国土の20%は今もロシアに占領されているが、そのなかでもクリミア半島は特別な位置にある。「クリミア自治共和国はウクライナの一部だ」

2014年のロシア軍によるクリミア半島併合以来、「ロシアは半島を強力な軍事基地に変え、旧ソ連時代の軍事施設をすべて復活させた」。

反攻作戦の標的は陸の回廊

「ロシアはあらゆる手段を講じて、占領したヘルソン州、ザポリージャ州、クリミアなどの占領を維持している」と、スキビツキーは言う。そしてクリミアは、黒海を地理的に支配する位置にあり、それがロシアの戦力投射の拡大に役立っている。「クリミアはロシア軍が黒海一帯を完全に支配し、地中海方面まで軍事力を展開する役に立つ」

「シリアやアフリカ諸国でロシアが存在感を発揮できるのも、黒海におけるロシアのプレゼンスによるところが大きい。海外拠点に必要なものはすべてここから供給できる」と、スキビツキーは付け加えた。

ウクライナの反攻作戦は、ザポリージャからアゾフ海に向かって南下しようというものだ。これが成功すれば、クリミア半島とロシア西部を結ぶ陸路を断ち切れる。

陸の回廊は、ロシアが1年半の戦争で得た最大の成果のひとつだ。これを失うことは、ウラジーミル・プーチン大統領にとって深刻な政治的打撃となり、クリミアとウクライナ南部におけるプーチンの勢力を危険にさらすことになる。ウクライナがすでに数回攻撃しているクリミア大橋を破壊すれば、この問題は特に深刻になる。

「現在、ロシアはクリミア半島を積極的に利用して、ヘルソンとザポリージャの部隊に補給を行っている」と、スキビツキーは言う。「物資の供給、軍需品や人員の輸送はすべてクリミアを通っている。クリミアでは最近、新たに第18連合部隊が結成され、ウクライナの反攻を阻止するため、ザポリージャを拠点に活発に活動している」

 

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き 副議長ら2人が利

ワールド

銅に50%関税、トランプ氏が署名 8月1日発効

ワールド

トランプ氏、ブラジルに40%追加関税 合計50%に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中